再エネを北海道から東京へ送る「長距離直流送電」、実現への課題と今後の展望:エネルギー管理(2/3 ページ)
日本国内における将来的な洋上風力の導入拡大を見越し、発電した電力を遠方の需要地に送電できる「海底直流送電」の実現に向けた検討が進んでいる。2021年3月からスタートした「長距離海底直流送電の整備に向けた検討会」で議論された、これまでの論点と今後の展望をまとめた。
海底ケーブルを設置するまでの流れ
検討会の第1回会合では、電源開発送変電ネットワーク株式会社から北本連系設備等の工事実績が報告されている。ルート調査が開始された1974年に先立ち、1972年から漁業関係者との協議が開始されており、1980年に運用が開始された。
海底ケーブルの施工・設置にあたっては、工事計画申請(経済産業省)、海上工事届出(海上保安庁)等の許認可申請・届出が必要となる。
また海底ケーブルによる占用の許可については、法令ごとにケーブルの敷設海域・揚陸部等の対象となる全ての自治体に対して申請することが定められており、敷設時の申請および更新手続き(1〜5年ごと)、占用料(数十円〜数百円/m)の支払いが必要となる。
直流海底ケーブルは図3のような多層構造となっており、1メートル当たりの重量が50〜80kgと想定されるが、仮に長さを900km(後述)とするならば、総重量は5万トン以上となる。
このように重いケーブルを海底に敷設するには、専用の大型敷設船が必要となる。
これまでの直流送電の敷設実績や、検討会でのメーカーヒアリング等からは、現状の設備・工程管理等を前提とすると、長距離海底直流送電の導入には最短でも15年程度は要するものと想定されている。
北海道東京間連系設備の工事費概算
広域系統マスタープランの中間整理では、再エネ導入量等を変えた複数のシナリオに基づき、今後必要とされる系統増強案が提示されている。
洋上風力30GWシナリオではHVDC容量を400万kW程度、洋上風力45GWシナリオではHVDC容量を800万kW程度とすることが妥当との分析結果が示されている。
マスタープラン中間整理では、北海道と東京を連系するHVDC送電ルートを新設する費用としてHVDC容量400万kWの場合で、約0.8〜1.2兆円と試算されている。
2つの案はいずれも費用便益評価(B/C)が1以上であると試算されており、早期に整備計画すべきプロジェクトの一つとして位置付けられている。
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