超電導フライホイール蓄電システムで鉄道を省エネに、JR東日本が世界初の実証:蓄電・発電機器
JR東日本が、鉄道用超電導フライホイール蓄電システムの実証試験を開始すると発表。電車のブレーキ時に発生する回生電力エネルギーを有効利用できるシステムで、超電導フライホイール蓄電システムの鉄道への応用は、世界初の導入事例になるという。
JR東日本は2022年6月7日、鉄道用超電導フライホイール蓄電システムの実証試験を開始すると発表した。電車のブレーキ時に発生する回生電力エネルギーを有効利用できるシステムで、超電導フライホイール蓄電システムの鉄道への応用は、世界初の導入事例になるという。
フライホイール蓄電システムは、装置の内部にある大型の円盤であるフライホイールロータが回転することで、発電電動機を介して回生電力エネルギーを運動エネルギーとして貯蔵(充電)できる。必要に応じてエネルギーを放出(放電)することができ、充放電の繰り返しによって性能が劣化せず、有害物質を含まない構造のため、環境に優しいというメリットもあるという。
JR東日本が導入するシステムでは、さらにフライホイールローターの荷重を受ける軸受け部分に超電導技術(超電導磁気軸受)を採用。非接触化を図り、これによりメンテナンスコストの削減、エネルギー損失の低減を実現したという。
具体的な利用方法は、下り勾配を走行する列車からブレーキ時に生まれる回生電力エネルギーを運動エネルギーとしてフライホイールに貯蔵。このエネルギーを上り勾配
を登坂走行する列車に供給する。これにより、登坂走行をアシストするために変電所から送電する電力量を削減できるという仕組みだ。
導入するシステムの蓄電容量は29kWh、フライホイールローターの重量は15トン、システムの導入による年間の省エネ効果は146MWhを見込んでいる。
このシステムを導入したのは中央本線穴山駅に隣接する穴山変電所で、2022年6月から穴山駅付近を走行する列車走行時の充放電を実施し、充放電特性およびシステムの有効性の検証を行い、将来の実装を目指すとしている。
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