建築分野の省エネ・再エネ活用を促進――省エネ法や建築基準法が改正:法制度・規制(4/4 ページ)
建築分野における省エネ・再エネ利用の促進に向け、2022年6月に建築物省エネ法や建築基準法の改正が行われた。本稿ではその内容を紹介する。
大規模建築物における部分的な木造化を促進
現在、耐火性能が要求される大規模建築物においては、壁・柱等の全ての構造部材を例外なく耐火構造とすることが求められており、部分的な木材使用が困難であることが課題とされていた。
このため建築基準法の改正により、壁・床で防火上区画され当該区画外に火災の影響を及ぼさず、防火上・避難上支障がない範囲内で、部分的な木造化を可能とすることとした。
これにより、大規模建築物への木材利用の促進を図るとしている。
3階建て木造建築物の構造計算の合理化
近年、建築物の断熱性向上等のために、階高を高くした建築物のニーズが高まっている。
これまで、高さ13mまたは軒高9mを超える木造建築物を建築する場合、高度な構造計算(許容応力度等計算等)により構造安全性を確認する必要があり、一級建築士でなければ設計または工事監理をしてはならないとされてきた。
このことが、階高の高い3階建て木造建築物普及のブレーキの一つとなってきた。このため建築基準法の改正により、高度な構造計算までは求めず、二級建築士においても設計できる簡易な構造計算(許容応力度計算)で建築できる範囲が拡大された。
グリーンリフォームローンの創設
建築物・住宅分野において省エネ・再エネ導入を促進するためには、新築のみならず既築住宅への支援策が重要である。省エネ・再エネ設備の導入は長期的に見れば費用対効果の良い投資であるが、その初期費用の負担が、導入の障壁となり得る。
このため国は住宅金融支援機構法を改正することにより、住宅の省エネ・再エネリフォームに利用可能な低利融資制度「グリーンリフォームローン」を創設することとした。融資額は最大500万円、返済期間10年、全期間固定金利という商品である。
建築物は一度導入されると数十年は使用されるものであるため、現時点存在する建築物の多くは、2050年にも存在すると予想される。
新築建築物に対する省エネ・再エネ設備のさらなる導入促進策や、既築建築物への対策強化、また木材利用によるCO2の吸収源対策が進むことを期待したい。
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