企業の自主的な「排出量取引」を実証――本格始動が近づく「GXリーグ」とは?:エネルギー管理(4/4 ページ)
国と企業が共同で「グリーントランスフォーメーション(GX)」の実現に向けた取り組みを推進する「GXリーグ」がいよいよ始動。企業間の排出権取引制度の実証など、新たな取り組みの実証が予定されている。その概要と今後の展望をまとめた。
GX-ETSの「第1フェーズ」は3年間、その後の展望は?
GX-ETSではEU-ETS等と同様に、フェーズを区切った運用を行う予定である。
GX-ETSの第1フェーズは2023年度から2025年度の3年間であり、ETS参画社は基準年度排出実績(X)から2025年度目標排出量(C)に向けて一定の削減量で低減するように目標総排出量を設定する。ただし鉄鋼・素材・エネルギー等の多排出事業者は、トランジション・ロードマップに沿った削減経路を設定可能とする。
フェーズ中の各年度終了の時点で、参画事業者は排出実績を、第三者検証を受けた上で、GXダッシュボードに登録する。
GX-ETS参画事業者は、第1フェーズ終了時点(2026年春〜夏)時点で目標未達成であった場合、超過削減枠もしくはカーボン・クレジットを調達することが求められる。このことからGX-ETSにおいては、本格的なクレジット取引は、第1フェーズ終了時点のみに発生すると予想される。
クレジット市場価格の安定化に向けて
排出量取引制度は、需要と供給のバランスにより市場価格が変動することが特徴であるが、炭素価格の予見性が低いことは、長期的な経済社会全体の行動変容を阻害するおそれもある。
このためJ-クレジットとJCMについては、国が保有するクレジットの最低入札価格を設定することにより、炭素削減価値の下限価格としてのシグナルを発信することとする。
また逆に市場価格の高騰時には、国が「GX証書(仮称)」を固定価格で販売することにより、実質的な上限価格として機能する。これにより、超過削減枠やクレジットの価格は一定の幅でのみ、変動することとなる。
本格的なクレジット取引は、第1フェーズ終了時点のみに発生すると予想されることから、予見性確保の観点からは、今年度中に2026年度までの上限/下限価格を示すことが必要と考えられる。
GXリーグの参画は義務ではなく、GX-ETSの削減目標値も任意で決められる。
しかしながら近年の企業は、金融機関や株主、取引先、労働者、消費者など多様な主体からの規律に直面しているため、GHG排出削減の取組は一定の実効性があると想定される。努力する企業が適切に評価され、経済的にも報われる仕組みとすることが期待される。
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