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再エネ大量導入の時代、電力系統の混雑を考慮した「調整力」の確保をどうすべきか?エネルギー管理(3/4 ページ)

新たな電源の早期接続を認める「ノンファーム型接続」が始まることで、今後エリア内でも電力系統の混雑の発生予想される。政府はこうした系統混雑を考慮した調整力確保の考え方について、議論を開始した。

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ドイツの対応事例

 ドイツでは課題1「混雑処理用ΔkWの確保」への対処策として、原則、需給調整用ΔkW確保後の余力を用いて、カウンタートレード(前日市場後に、混雑を緩和するkWh取引)や再給電指令(前日市場後に、混雑を緩和する電源出力の変更)を行っている。

 ただし風況の良い冬季には、北部の風力発電から大量の電力が南部に向けて流れ、重度の系統混雑が生じるおそれがあるため、南部の休止電源等により、上げ調整力を確保している。これは「系統リザーブ」電源と呼ばれている。


図3.ドイツ 混雑処理用ΔkWの確保策 出所:需給調整市場検討小委員会

 また課題2「需給調整用ΔkWの不足」に対しては、通常は非混雑系統の余力で対応しているものの、別途、事前に「容量リザーブ電源」を確保することにより、万一の際の需給調整用ΔkWとして活用することで対応している。


表2.ドイツのリザーブ電源 出所:需給調整市場検討小委員会

英国の事例

 英国では、調整力市場「Balancing Mechanism」で確保した需給調整用ΔkWを実需給断面の需給調整に用いると同時に、その余力を系統混雑処理にも使用している。(図4の緑色部分)

 需給調整用ΔkWだけでは不足する場合、課題1「混雑処理用ΔkWの確保」策として、「Constraint Management Services」が長期契約に基づき確保される。(図4の赤色部分)

 また課題2「需給調整用ΔkWの不足」に対しては、「STOR(Short-term Operating Reserve)」の仕組みにより、年3回入札を行い、需給調整用ΔkWを追加調達することで対処している。


図4.英国 Balancing Mechanism余力とConstraint Management Services 出所:需給調整市場検討小委員会

米国PJMの事例

 米国PJM(米国北東部の地域送電機関)では「ノーダル制」を導入しており、市場の約定結果により混雑処理される。

ノーダル制では送電ロスと混雑状況を加味して計算されるSCED(Security Constrained Economic Dispatch:信頼度制約付き経済負荷配分)の結果をもとに、混雑がなければ落札できていた混雑系統の電源が不落・停止となり、混雑がなければ不落であった非混雑系統の電源が落札・運転するため、系統運用者(PJM)が別途、混雑処理用ΔkWを調達する必要が無い(つまり、課題1「混雑処理用ΔkWの確保」が問題とならない)。


図5.ノーダル制のイメージ 出所:需給調整市場検討小委員会

 なおPJMでは、新規電源が系統接続するに際して、送電線の過負荷解消に要する系統増強費用は発電事業者が費用負担する「特定負担:deep方式」となっている。(日本は先述のとおり、一般負担:shallow方式)

 このためPJMでは、系統混雑は「フェーズ1」(特定の少数の箇所で地内混雑)に留まっていると考えられる。

 また課題2「需給調整用ΔkWの不足」に対しては、PJMは入札ゾーンを2つに分割し、ゾーンごとに需給調整用ΔkW必要量を調達することで対処している。

 現時点、各ゾーン内の地内系統混雑は軽微であり、確保済みΔkWの余力で対応できると考えられる。

 なおPJMではゾーン間の送電線(連系線)にはΔkWマージンを設定しておらず、ゾーン間のΔkW広域調達は行われていない。

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