再エネ大量導入の時代、電力系統の混雑を考慮した「調整力」の確保をどうすべきか?:エネルギー管理(4/4 ページ)
新たな電源の早期接続を認める「ノンファーム型接続」が始まることで、今後エリア内でも電力系統の混雑の発生予想される。政府はこうした系統混雑を考慮した調整力確保の考え方について、議論を開始した。
米国ERCOTの事例
米国ERCOT(テキサス州)では当初ゾーン制を採用しており、地内系統混雑の発生に対して、混雑箇所で市場ゾーンを分割すること(ゾーンの細分化)により、対処してきた。
その後ERCOTは「ノーダル制」に移行し、市場約定結果により混雑処理が行われるため、系統運用者による上げ調整力の確保が不要となった(つまり、課題1「混雑処理用ΔkWの確保」が問題とならない)。
また課題2「需給調整用ΔkWの不足」に対しては、ERCOTは混雑系統の需給調整用ΔkWをリクワイアメント未達によるペナルティ対象として、事業者に差し替え依頼を通知する(図6の青色部分)。
電源差し替えによっても需給調整用ΔkWが不足する場合は、ERCOTが「補足アンシラリーサービス市場」から不足分を調達する(図6の緑色部分)。補足アンシラリーサービス市場では、事業者から再提出された電源コスト情報(3-Part:ユニット起動費、最低出力コスト、限界費用カーブ)をもとに、調達コストが最小化されるように落札対象が選択される。
まとめ
地内系統混雑は本稿で紹介した調整力だけでなく、供給力の評価・確保にも大きな影響を与えるものである。
日本では2021年1月のノンファーム型接続の適用開始後、すでに2022年6月末時点、全国合計で約4,500万kWの接続検討の申込み、約450万kWの契約申込みが行われている。このため地内系統混雑は、諸外国と比べても早いペースで、多地点で発生する可能性がある。
混雑処理には一定の費用が掛かるため、系統利用の在り方全体として、費用便益を評価することが必要と考えられる。
混雑系統の調整力確保の検討と並行して、混雑系統への電源新設を適切に回避するインセンティブを与える制度についても検討が進められることを期待したい。
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