入札が活発化しない需給調整市場 その原因と抜本的な対策とは?:エネルギー管理(4/4 ページ)
再エネの導入拡大などに伴い、電力系統の安定化に向け重要性が増している「調整力」。一般送配電事業者がその調達を効率的に行うために開設された需給調整市場だが、入札不足が続いている。この状況を受け、政府では抜本的な対策の検討を開始した。
商品要件の緩和
需給調整市場における応札量の増加や競争促進のためには、商品要件の緩和による参入リソース拡大も有効と考えられる。
現在、三次①を含めた調整力の最低入札量は、専用線で5MWとされているが、これを1MWに変更する。これには需給調整市場システムの改修が必要となるため、導入時期は未定である。
また現在、一次〜三次①の入札時間単位は3時間のブロック時間としているが、これを30分単位に変更する。
ネガポジ単体リソースの参入を認可
現在、小規模なネガポジリソース(需要抑制から発電まで可能なリソース)については、アグリゲーションにより最低入札量を満たすことで、「ネガポジ型」として需給調整市場に参入可能である。
これに対して、リソース単体で最低入札量を満たす大規模なネガポジリソースは、ネガワット型(需要抑制)もしくはポジワット型(発電)として需給調整市場への参入は可能であるものの、ネガポジ型としての参入は整理されていなかった。単体ネガポジリソースとしては、系統用蓄電池や揚水発電機などが想定される。
これらのリソースをネガポジ型として参入可能とすることで、応札量の増加や市場競争の活性化が期待される。
今回、需給調整市場検討小委員会では、単体ネガポジリソースとしてネガポジ型の応札が可能な商品や、アセスメント実施方法等を整理することにより、ネガポジ単体リソースの参入を可能とした。
現在、「あるべき卸電力市場、需給調整市場及び需給運用の実現に向けた実務検討作業部会」では、kWhとΔkWを同時に約定させる「同時市場」への移行が検討されている。
三次①等の商品は、当面は現在の需給調整市場の枠内での「改善」変更が必要とされるが、なるべく将来像と整合的な制度変更とすることが期待される。
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