東京都の太陽光発電“設置義務化”を完全解説、「建築物環境報告書制度」のポイント:2025年4月から施行(5/5 ページ)
東京都が建物に起因するエネルギーのCO2排出量削減に向け、新たに導入する「建築物環境報告書制度」。“太陽光発電の設置義務化”が話題となった同制度について、その主要なポイントを解説する。
ZEV充電設備の整備基準を新設
都は2030年までに乗用車の新車販売台数に占めるゼロエミッション車(ZEV)比率50%の目標を設定し、普及を後押ししている(※ZEV:電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、燃料電池自動車(FCV))。
今後のZEVの普及が見込まれる中、住宅等の新築時にZEVへの備えをすることは、建築物価値向上の観点からも重要である。よって建築物環境報告書制度では、ZEVの充電設備の整備基準を導入することとした。
戸建住宅については、充電設備は任意としながらも、充電設備用配管等の整備を義務とする。ZEV充電設備の整備や上記の断熱・省エネ性能設備の整備についても、義務化の対象はあくまで特定供給事業者である。
なお、太陽光発電については供給棟数から差し引く「除外対象住宅等」という仕組みがあるが、この除外対象住宅等であっても、断熱や省エネ、ZEV充電設備等は基準に適合することが必要である。
環境性能の説明制度
本制度では、供給事業者は注文住宅の施主等及び建売分譲住宅の購入者等に対して、断熱・省エネ、再エネ等の環境性能に関する説明を行うことが求められている。
また逆に、注文住宅の施主等は、事業者からの説明を聞いた上で、必要な措置を講じ、環境負荷低減に努めるという立場を踏まえ、注文等について判断することが求められる。同じく建売分譲住宅の購入者等は、事業者からの説明を聞き、環境性能等の理解を深め、環境負荷低減に努めるという観点から検討し、購入等について判断することが求められる。
これにより、施主等がより環境性能の優れた住宅等を選択購入するようになり、供給事業者が一層優れた住宅等を供給するインセンティブを与えることとなる。
新制度による太陽光発電の導入効果
建築物環境報告書制度は2025年4月に施行される予定であり、2022年12月の都条例改正から2年程度の周知期間が設けられている。
都は、建築物環境報告書制度による直接的な太陽光パネル導入量として、年間4万kW程度を見込んでいる。また、大規模建築物への設置義務化や既存建物も含む制度対象外の建物への波及効果等も通じて、2030年度には200万kW以上へ増加させることを目指している。
国内の他の自治体や欧米の複数の自治体においても、太陽光発電設備の設置がすでに義務化されており、今後はさらに拡大することも予想される。
一般消費者(施主)や事業者等の双方にメリットがある仕組みであることを、誤解なく丁寧に伝えていくことが求められる。
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