脱炭素化で注目の「カーボン・クレジット」、国内外の動向と日本での実証結果:GXリーグでも活用(5/5 ページ)
日本でも「GXリーグ」が創設されるなど、企業の脱炭素化に向けた動きが加速している昨今。企業のカーボンニュートラル施策の一つとして利用されるのが「カーボン・クレジット」だ。国内外のカーボン・クレジット制度の動向と、日本で実施された実証市場の結果をまとめた。
「カーボン・クレジット市場」の取引結果
「カーボン・クレジット市場」には、183者の企業・地方公共団体等が実証参加者として参加した。実証期間中の売買高は合計約15万t-CO2、売買代金は約3億円となった。売買されたJ-クレジットの種別や平均単価は以下のとおりである。
実証期間中(85営業日)の売り注文は220件、買い注文は342件、約定件数は163件であり、実証参加者183者のうち、注文を実施した参加者は60者、売買が成立した参加者は55者であった。
また従来、国が保有するJ-クレジットは年2回の入札が実施されていたが、今回の実証では、国も通常の売り注文を行うことによりJ-クレジットを販売した。
「カーボン・クレジット市場」売買区分の変更
取引所取引においては、売買される商品の標準化が重要である。相対取引ではJ-クレジットのプロジェクトごとの売買が可能であるが、これでは取引銘柄が多数となる。このためカーボン・クレジット市場では流動性を集中させる観点から、当初、大分類である方法論体系ごと、その下層の個別方法論の2つの売買区分を設定した。実際に移転するクレジットの具体的な内容(方法論)は、約定のあと判明する仕組みである。
しかしながら、この第2層区分「再エネ」には電力由来と熱由来のプロジェクトが混在することとなるため、RE100等の報告を目的とする(電力由来クレジットを求める)需要家には不都合な区分となっていた。
このため東証は2023年1月以降、電力由来/熱由来の観点から区分を変更し、これにより、流動性の向上と価格安定性が改善された。
市場取引のさらなる活性化へ
今回のカーボン・クレジット市場実証では、対象クレジットはJ-クレジットだけであったが、今後はJCMクレジットなど、他のクレジットについても取り扱いが検討される。また現物取引だけでなく、将来的なリスクヘッジニーズに対応した先物取引等のデリバティブ商品の開発や、より幅広い主体の取引参加に関して、検討を深める予定としている。
さらにGX-ETSにおいても、J-クレジット・JCMだけでなく、他のカーボン・クレジットを「適格カーボン・クレジット」として位置づけることが今後の検討課題とされている。
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