蓄電池は10MW以上が対象に、「長期脱炭素電源オークション」の調整機能要件:法制度・規制(4/4 ページ)
脱炭素電源への投資促進を目的に、2023年度から始動する「長期脱炭素電源オークション制度」。蓄電池や揚水発電、水素・アンモニア火力等が同制度に参加する場合、調整機能を持つことが要件とされている。こほのど、要件として求める調整機能の具体的な基準が検討された。
揚水発電・蓄電池の設備容量
既存のグリッドコードでは対象設備容量は100MW以上であるが、上述のとおり、既設の蓄電池のすべて、また一部の揚水発電は100MW未満の規模である。
今後の新設蓄電池であっても、100MW以上の連系は多くないと想定されるため、もし100MW以上の蓄電池のみを対象とするならば、多くの蓄電池には調整機能を求めないこととなってしまう。
また、そもそも長期脱炭素電源オークションにおいて、揚水発電・蓄電池の最低入札容量は10MW以上とされており、可能な限り多くの電源に対して調整力の具備を要件化するという観点から、調整機能を求める揚水発電・蓄電池の設備容量は10MW以上とする。
調整力の確保を担う制御回線の方式
需給調整市場において、電源に対する制御回線としては、「専用線」および「簡易指令システム」の2種類がある。
専用線は、一般送配電事業者の中給システムと電源を直接接続する回線であり、伝送遅延が少なく信頼性が高いメリットがある。以前は、専用線は長い工期や高コストがデメリットであったが、近年では低コストな電柱方式・光ケーブル回線が普及している。
他方、簡易指令システムは、中給システムと電源を汎用回線を介して接続する方式であり、工期が短く低コストというメリットがある一方、伝送遅延が多く、信頼性が低いというデメリットがある。
小規模な電源では、専用線の費用負担が相対的に大きいことから、10MW以上100MW未満の揚水発電・蓄電池では、光ケーブル回線で施工できない設備に限り、簡易指令システムも認めることとする。
なお簡易指令システムは性能上の制約により、LFCには適用できないため、LFC機能の具備は必須としない。GFは自端制御であるため元々制御回線が不要であり、EDCでは簡易指令システムでも性能制約が問題とならない。
揚水発電・蓄電池に求める調整機能のまとめ
以上より、長期脱炭素電源オークションに参加する揚水発電・蓄電池に対して、グリッドコード(火力発電GTまたはGTCC)を参照し、以下の機能を要件化(規定)することとした。
繰り返しとなるが、この要件はあくまで間近に迫った長期脱炭素電源オークションに向けて急遽検討されたものである。調整力の脱炭素化に向けて、将来的には揚水発電・蓄電池に対して、より高度なグリッドコードが要件化されることも想定される。
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