鉄道分野のカーボンニュートラル化はどう進めるべきか、国交省が中間目標を公表:法制度・規制(5/5 ページ)
世界トップクラスの旅客輸送量を持つ日本の鉄道。国交省が設置した「鉄道分野のカーボンニュートラル加速化検討会」は、このほど鉄道分野の脱炭素化に向けた各種の施策や、目標値などを整理した中間とりまとめを公表した。
鉄道分野の脱炭素目標
「鉄道分野におけるカーボンニュートラル加速化検討会」の2022年度中間とりまとめにおいては、国全体としては脱炭素化が困難な分野もあることを踏まえ、鉄道分野は2050年カーボンニュートラルという「平均点」ではなく、100%を超えるCO2削減を目指すことも必要、と記されていた。
また、目標値の設定例として、
―2030年:駅のCO2排出量の実質150%相当(350万トン)を削減(2019年度比)
―2050年:鉄道のCO2排出量の実質100%相当以上(1,000万トン+α)を削減(2019年度比)
を掲げ、2050年目標の具体値は2022年度内の決定を目指していたが、これは現在も公開されていない。
検討会の第6回会合では新たな目標として、2030年代において鉄道分野のCO2排出量(2013年度1,177万トン)の実質46%に相当する量(約540万トン)を削減することを目指す、とされた。国の目標が「2030年度」に46%削減(2013年度比)であるのに対して、「2030年代」の目標としている理由は不明である。
また、鉄道分野・鉄道関連分野の脱炭素化に向けた取り組みの加速化・検討の深化のため、鉄道事業者と関係企業等がそれぞれの情報を共有する「鉄道脱炭素官民連携プラットフォーム」が立ち上げられた。プラットフォームでは、セクターカップリング等を促進するための知見の共有や、規格等に係る課題については、見直しや標準化の方向性について議論を深める予定としている。
鉄道は地域や路線による条件の差も大きく、事業者の経営環境もかなり異なるものとなっている。低炭素輸送モードとしての鉄道の価値を再認識しつつ、事業者規模に応じた対策を検討することが必要とされる。
関連記事
- 超電導フライホイール蓄電システムで鉄道を省エネに、JR東日本が世界初の実証
JR東日本が、鉄道用超電導フライホイール蓄電システムの実証試験を開始すると発表。電車のブレーキ時に発生する回生電力エネルギーを有効利用できるシステムで、超電導フライホイール蓄電システムの鉄道への応用は、世界初の導入事例になるという。 - 海外の「水素戦略」の最新動向、投資規模やスピード感の違いが明らかに
政府が改定を検討している「水素基本戦略」。その内容を討議する「水素・燃料電池戦略協議会」において、諸外国の水素政策と民間投資の動向が報告され、その規模やスピード感の違いが明らかとなった。 - フィルム型のペロブスカイト太陽電池を駅に導入、東芝が東急らの実証に提供
東芝は2023年2月9日、桐蔭学園、東急、東急電鉄、横浜市の4者が東急田園都市線・青葉台駅正面口改札前自由通路にて実施するペロブスカイト太陽電池の先行実証実験向けに、大面積のフィルム型同電池を提供すると発表した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.