容量市場を補完する「予備電源制度」――調達量と費用負担の概要：法制度・規制（2/5 ページ）

2024年度以降に本格的な運用がスタートする容量市場。政府では容量市場を通じた調達量の抑制と、控除量のリスクをカバーするための対策として「予備電源制度」の創設を検討中だ。このほど同制度の調達方式や費用負担に関する詳細が議論された。

[梅田あおば，スマートジャパン]

予備電源の調達方式

　容量市場では、オークション方式による調達が行われている。他方、予備電源はその候補となる電源及び募集量が容量市場等に比べて限定的であり、個別電源ごとに必要となる定期点検や修繕、立ち上げ時の燃料調達等の状況が大きく異なる。

　このため予備電源では、事業者提案に基づく総合評価方式により、可能な限り社会的コストを低減させることとする。

　評価項目は、価格評価と価格以外の評価に大別される。

表2.総合評価方式における評価項目　出典：制度検討作業部会

　kW公募では、募集容量を満たすために落札不可欠である電源が存在していたため、高値で入札しても確実に落札される状況であった。そのため、このような価格支配力を有する事業者に対して、入札価格に規律が設けられた。

　予備電源制度においても、候補となる高経年火力電源等の数が限られることが想定されるため、入札価格の妥当性を監視等委員会において事後的に確認することとする。また、当面は合理的な上限価格の設定が困難であるため、実施状況を見ながら上限価格の設定の是非を検討する予定である。

　また、直接的な評価対象とはしないものの、その他の申請項目として事業者からの提出を求めることとする。

表3.その他の申請項目　出典：制度検討作業部会

予備電源制度全体のバランスの観点での評価

　大規模災害等の非常に稀頻度なリスクに対応する予備電源の目的上、上記のような電源個別の事情だけでなく、燃料種のバランスや電源立地のバランス等、予備電源全体を見て判断すべき要素もある。

　燃料種については、石油はエネルギー密度が高く、備蓄が容易等の利点があるため、エネルギーセキュリティの観点から、一定程度の石油火力設備容量を維持すべきと整理されている。このため、制度開始時点においては、石油火力には一定の評価を加えることにより、石油火力を優先的に予備電源として確保していくこととした。石油のサプライチェーン維持を含めた燃料確保策については、今後の検討課題である。

図3.石油火力発電所の設備容量の推移　出典：制度検討作業部会

　またエリアにより、高経年火力の燃料種の内訳が大きく異なることや地域間連系線の制約を踏まえ、予備電源制度においては、

• 東エリア（北海道、東北、東京）
• 西エリア（中部、北陸、関西、中国、四国、九州）

の2つに分け、バランスよく予備電源を確保することとした。