2030年目標に向けた再エネ導入、関係省庁別の施策の進捗状況は?:自然エネルギー(4/4 ページ)
「再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」第53回会合で、2030年エネルギーミックス達成に向けた進捗状況について、環境省・国土交通省・農林水産省による報告が行われた。各省が管轄する再エネ導入施策について、足下の状況と今後の見通しが明らかになった。
農山漁村再生可能エネルギー法の推進
農林水産省は、農山漁村再生可能エネルギー法のもと、農山漁村において農林漁業の健全な発展と調和のとれた再エネ発電を促進するための措置を講ずることにより、農山漁村の活性化を進めている。
農山漁村再エネ法では、農地法や森林法等の手続きのワンストップ化や、第1種農地の転用不許可の例外などの支援策が講じられている。
2022年3月末時点で、81の市町村が農山漁村再エネ法による基本計画を作成済みであり、同法に基づく設備整備計画の認定数は累計で100件に上る。このうち、第1種農地転用不許可の例外の活用は41件となっている。
農山漁村再生エネ法の基本方針では、その経済的な目標として、再エネ電気・熱に係る収入等600億円を掲げているが、具体的な設備容量や発電電力量は定めていない。
農水省の取り組みは、上記の環境省地域共生型再エネ(太陽光4.1GW)の内数とされており、ポジティブゾーニング等の環境省との連携を通じた導入の促進、目標の具体化が求められる。
営農型太陽光発電の推進
営農型太陽光発電は、農地に支柱を立てて上部空間に太陽光パネルを設置し、農業生産と発電を両立する仕組みであり、この農地部分の一時転用許可が必要となる。やや古いデータしか公開されていないが、2020年度末時点における農地一時転用許可件数は累計で3,474件、873haに上る。
一時転用許可にあたっては、同年の地域の平均的な単収と比較して概ね2割以上減収しないことなど、適切な営農の継続が条件とされているが(※荒廃農地を再生利用した場合は、単収要件は課されない)、稼働済み営農型太陽光発電のうち458件(18%)では、下部農地での営農に支障が生じていることが報告されている。
このような場合、農地転用許可権者が発電事業者(営農者)に対して改善措置を講ずるよう指導を行っているが、適切な営農の確保に結びつかないケースも発生している。
一次産業の特性上、発電や熱利用等に関する具体的な数値目標を設定する困難さがあるのかもしれないが、農林水産省においても適切な数値目標を定め、進捗管理していくことが求められる。
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