2026年度から低圧リソースも需給調整市場に参画へ、押さえておきたい制度の概要:法制度・規制(3/3 ページ)
分散型リソースのさらなる活用促進に向けて、2026年度から需給調整市場に家庭用蓄電池などの低圧リソースを本格的に活用できるようにする方針が固まった。現時点で決まっている制度の詳細やポイントを紹介する。
低圧リソースの需給調整市場参加に向けた「群管理」
現行の需給調整市場にDRが参加する場合、アグリゲーターは大口のリソース(需要家)を活用して参加することを想定し、市場参加要件としてリソースの電圧階級を「高圧以上」と定めている。
このため、現行ルールにおいても、複数のリソースを束ねた合計の基準値(ベースライン)にて調整力を算定し供出する仕組みとしてシステムを構築しているものの、リソース登録数に上限(ポジ:999件、ネガ:9,999件、リスト・パターン:20パターン)が設定されている。よって、一般家庭などの低圧需要家(家庭用蓄電池等の低圧リソース)が需給調整市場に参加する場合、そのリソース数は数万件以上の規模になると想定されるため、現行システムでは、これを取り扱うことができない。
このため、数万のリソースをあたかも1つのリソース「群」としてみなす「群管理」の概念を導入することにより、現行システムの改修を最小限として、早期(2026年)の低圧リソース活用を実現することとした。
これにより、登録可能なリソース数の上限をポジワット・ネガワットリソースともに10万件に拡大し、1事業者当たりのリスト・パターン登録数の上限を200件まで増加させることにより、柔軟な運用を可能とした。
また、1リスト・パターンに複数の「群」を登録可能とする。ただしシステムの煩雑さを避けるため、「群」は受電点計量した低圧小規模リソースと機器点計量した低圧小規模リソースで分けて管理することとした。
なお、需給調整市場において参加リソースの「事前審査」は重要であるため、現行ルールでは、リスト・パターンの変更・追加は四半期ごと、リスト・パターン単位もしくはリソース単位で事前審査が行われている。多数のリソースが入れ替わり得る低圧ではこの対応は困難であるため、既存のリスト・パターンについては、一度の入札につき、リスト・パターンの供出可能量の10%以内の範囲であれば、事前審査後のリソース入替・追加を許容することとした。
また現行制度(つまり高圧以上)では、受電点からの逆潮流で需給調整市場に参画するためには、発電計画との差分を調整力供出量とみなして、インバランス補正を行うため、原則として逆潮流1カ所ごと(1需要地点ごと)に1つの発電BG(=「調整電源BG」)を組成する必要があり、アグリゲーターは発電BGごとに発電販売計画や基準値計画を作成する。
しかしながら、低圧において、数万にも上るリソースの計画を1地点ごとに作成することは困難であるため、低圧の発電リソースについては、1発電地点1BGの制約は設けず、インバランス補正に必要な各種計画の提出を発電BG単位で実施可能とした。
なお需要BGについては、これまでも複数需要地点1BGで運用されており、各種計画提出も需要BG単位で実施されている。
機器点計量における不正防止策やペナルティ
需給調整市場に機器点計量された特別高圧・高圧・低圧リソースが参加するにあたり、不正を防止することは重要である。このため、当面は表2のような抜き打ち監査の実施や一定の金銭的ペナルティ、取引会員資格の剥奪などを行うこととして、状況に応じて再検討することとした。
以上の整理を踏まえ、システム改修等が順調に進むことを前提として、2026年度から需給調整市場における低圧小規模リソースの活用及び機器個別計測の開始を予定している。
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