浮体式洋上風力発電の開発動向、政府は新たな産業戦略を策定へ:自然エネルギー(4/4 ページ)
主要な国内の再生可能エネルギー電源として導入拡大が期待されている洋上風力発電。なかでも水深の深い海域にも導入できる「浮体式」については、今後さらなる技術開発やコスト低減が求められている。こうした浮体式洋上風力発電に関する技術開発や、政府の投資政策の動向についてまとめた。
排他的経済水域(EEZ)における洋上風力発電
日本の排他的経済水域(EEZ。接続水域を含む)は世界第6位の約405万km2であり、浮体式洋上風力の導入に大きなポテンシャルがある。他方、現行の再エネ海域利用法は領海のみを対象としているため、EEZでの洋上風力導入に向けた制度的措置が必要とされている。
このため内閣府では、EEZにおける洋上風力発電の実施に向け、国連海洋法条約(UNCLOS)との整合性を中心に、国際法上の諸課題について有識者をメンバーとする検討会を開催し、2023年1月にとりまとめを行っている。
また環境省においても、EEZにおける環境配慮の確保を含む、風力発電に係る環境影響評価制度の在り方について検討を開始するなど、浮体式洋上風力のEEZへの拡大については、区域の設定に関するステークホルダーの調整を中心に、関係府省をまたぐ多様な論点が想定される。
諸外国におけるEEZを含む洋上風力の入札制度を大別すると、以下の2つに分けられる。
- 政府が海域選定や事前サイト調査、環境アセス等を実施した上で、海域リース権と支援価格を一度の入札で決定する「一段階方式」
- 政府が海域を選定した上で、海域リース権入札を実施し、落札事業者がサイト調査や環境アセス等を実施した上で、支援価格入札に応札する「二段階方式」
また、各国政府にて海洋空間計画(MSP)を策定しており、その策定プロセスにおいて、ステークホルダーとの一定の合意形成を、政府主導で実施している。
「一段階方式」は、利害関係者の合意が得られた状態で事業者が選定されるが、価格入札と最終投資決定の間のリードタイムが長いといった課題がある。
「二段階方式」は、事業者が海洋調査・設計等終了後に入札に参加するスキームであるため、より精緻な計画の策定が可能であるほか、事業者が海洋調査・設計と並行して利害関係者の合意形成を実施するため、複数海域で大規模プロジェクトを同時に展開することが可能であるといったメリットがある。
浮体式等洋上風力のGX分野別投資戦略
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によれば、世界全体の洋上風力プロジェクトの投資額は、以下のように試算されている。
- 2030年に導入量228GW(うちアジア126GW)で61億ドル(約6.6兆円)/年
- 2050年に導入量1,000GW(うちアジア613GW)で100億ドル(約11兆円)/年
このため、産業競争力強化の観点からも洋上風力、とりわけ浮体式洋上風力は重要分野であり、国は図10のような大規模なGX投資戦略を策定中である。
2023年6月には、「洋上風力産業ビジョン(第一次)」をとりまとめた官民協議会の下に、新たな会議体を設置し、2023年度内を目途として、浮体式の導入目標を含めた新たな「浮体式洋上風力産業戦略」をとりまとめる予定としている。
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