太陽光発電のコスト動向が公表、FITに「ペロブスカイト区分」を創設する新案も:太陽光(5/5 ページ)
FITやFIP制度における買取価格などの検討を行う調達価格等算定委員会(第91回)で、国内の太陽光発電のコスト動向が報告された。また今後、ペロブスカイトなどの新たな太陽電池の普及促進を念頭に、新たな発電設備区分の創設を検討する方針が明かされた。
ペロブスカイトなど新たな発電設備区分を創設へ
太陽光発電をさらに導入拡大するためには、従来設置が困難であった、耐荷重の小さい屋根やビル壁面等を活用することが求められる。
ペロブスカイト太陽電池などの次世代型太陽電池は、軽量・柔軟等の特徴があるほか、将来的には変換効率や耐久性等の性能でも、既存太陽電池に匹敵すると期待されている。
ペロブスカイト等については2025年からの事業化を見据え、2020年代中頃に年間100MW規模、2020年代後半にはGW級の量産体制を構築することを前提として、グリーンイノベーション基金等により、研究開発から社会実装まで切れ目なく支援が行われている。
こうした状況を踏まえ、ペロブスカイト太陽電池の需要創出を促すため、FIT/FIP制度のあり方についても、政府全体の政策の方向性と整合性を取りながら、検討を進めることが求められている。よって、調達価格等算定委員会では今年度以降、次世代型太陽電池を念頭に置いた新たな発電設備区分の創設の検討に着手することとした。
なおペロブスカイトについては、将来的には既存の太陽電池と同等のコストを目指しつつ、2030年までに14円/kWh以下、中間目標として2025年度までに20円/kWhを見通せる技術の実現を目指すこととしている。
調達価格等算定員会では、実証事業等のコストデータの収集・分析を行い、区分設定や将来の自立化を見据えた価格設定のあり方について、来年度以降も議論を継続する予定としている。
ペロブスカイト等を対象とした新たな区分を創設するに際しては、FIT/FIPによる支援総額の見込みをあらかじめ試算しておくことが望ましいと考えられる。
ごく単純な仮定として、合計100MW(設備利用率14%、全量売電と仮定)のペロブスカイトを20年間、通常型太陽電池より1円/kWh「上乗せ」した調達価格・基準価格とする場合、24億円程度の追加的費用が生じることとなる。
軽量・柔軟なペロブスカイトは屋根や壁面に設置され、自家消費率はより高いと想定される一方、「上乗せ」金額の水準や認定量等の変数は、今後の検討次第で大きく変わり得る。
次世代型太陽電池技術は多種多様であり、技術間競争を阻害することのないよう、新規区分の設定には慎重な検討が求められる。
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