製品のGX価値評価に新指標、新たに登場する「削減実績量」の定義と運用方法とは?:エネルギー管理(3/4 ページ)
脱炭素に貢献する「GX価値」を持つ商品が適切に評価される環境の構築に向け、政府では新たな評価指標として「実際に自社の排出量を削減した施策に基づく製品単位のGHG排出削減量」を意味する「削減実績量」(仮称)を導入する方針だ。
「削減実績量(仮称)」の基本原則と発展的手法
研究会では、今後「削減実績量(仮称)」を国際的に訴求可能な指標としていくため、基本原則やLCA的手法について、整理している。
「削減実績量」の基本原則の第一は、「実際に自社の排出量を削減した施策を反映した製品単位排出削減量」であり、カーボンクレジットとは異なり、その削減量を独立した価値として取引することはできず、追加的に他者の排出量を低減させる効果はない。
また、「削減実績量」を開示・主張する場合には、気候変動以外の環境及び社会への影響(水資源、生物多様性、土地利用等)の有無を検討し、悪影響が想定される場合は対策を取ることが望まれる。
なお、製品単位排出量の把握方法は、LCA手法を用いたGHGインベントリ(Inventory accounting)を基本とする。
他方、今後の発展的手法の可能性としては、マスバランス方式による排出削減量の割当てを可能とすることや、シナリオ方式による製品単位排出量の把握、動的な排出量の把握などについて検討を行う予定としている。
「削減実績量」の具体的な算定手順については、今後、日本LCA学会等において分科会を設置し、有識者や業界関係者による検討を行う予定としている。
「削減実績量(仮称)」の国際標準化
グローバルに活躍する企業にとっては、指標は日本国内だけで通用するものではなく、世界的に利用可能であることが望ましい。このため、今後、「削減実績量(仮称)」の国際標準化を進めるためには、GHGプロトコルやISO 14068-1等の既存のGHG排出アカウンティングルールと整合性を図ることが重要となる。
またアジア諸国では、建材分野等ではJIS(日本産業規格)に対する信頼が高いため、これを梃子として、アジア圏での脱炭素市場創出の議論を日本がリードすることも期待される。
なお、新たな指標が国際的な認知を得るためには、日本語名称だけでなく、その英文呼称も重要となる。表2のとおり、現時点、日本語名称についても複数案があり未定であるため、仮称とされている。
また、「削減実績量(仮称)」を国内外で広く訴求していくためには、分かりやすいビジュアルなラベルやマークを設けることも有効と考えられる。英国Carbon Trustによる「Reduction claims(削減主張)」ラベルのように、「最終製品の削減割合を表すラベル」等は、国内外で既に幾つか存在しており、これらの先行事例を参考としながら、一定の指針や基準を日本主導で整備していくことが重要と考えられる。
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