製品のGX価値評価に新指標、新たに登場する「削減実績量」の定義と運用方法とは?:エネルギー管理(2/4 ページ)
脱炭素に貢献する「GX価値」を持つ商品が適切に評価される環境の構築に向け、政府では新たな評価指標として「実際に自社の排出量を削減した施策に基づく製品単位のGHG排出削減量」を意味する「削減実績量」(仮称)を導入する方針だ。
新指標「削減実績量」とは?
研究会事務局は、トランジション期における事業者のGXにより生み出された、従来製品に比較して排出削減量が大きい製品を評価する新たな指標として、「削減実績量」(仮称)を提案している。事務局では「削減実績量」(仮称)とは、「実際に自社の排出量を削減した施策に基づく製品単位のGHG排出削減量」と定義しており、CFPや「削減貢献量(Avoided Emissions)」との違いを以下のように整理している。
- カーボンフットプリント(CFP):製品ライフサイクル全体でのGHG排出量
- 削減実績量(仮称):実際に自社の排出量を削減した施策に基づく製品単位のGHG排出削減量
- 削減貢献量:GHG削減ソリューション(※)が実装された場合とそうでない場合のGHG排出量の差(※製品、サービス、技術、プロジェクトの総称)
事務局では、「削減実績量(仮称)」や「削減貢献量」は、いずれも事業者のGX取り組みによって生じた「製品のGX価値」であると整理しており、需要側が脱炭素・低炭素製品(GX製品)を選好して適切な対価を支払う指標として推進することを提案している。
「削減実績量(仮称)」と、他の既存指標等との詳細な比較は表1のとおりである。
3つの指標とGHGプロトコルScope1,2,3との関係
GHG排出量算定報告の国際的な基準の一つであるGHGプロトコルでは、その算定報告対象範囲として、Scope1、Scope2、Scope3を設けており、Scope1排出量+Scope2排出量+Scope3排出量の合計により、サプライチェーン全体の排出量を算定することが可能となる。
ここで図4のように、鉄鋼を原材料としてトラックを製造し、運輸業者がそのトラックを使用するバリューチェーンにおける、2つの異なるケースを想定する。
第1のケースとして、鉄鋼メーカーが燃費向上に資する高機能鋼材を製造した場合、運輸業者は自社のScope1排出量を削減することが可能となる。これにより、自動車メーカーはScope3下流排出量が削減される。「削減貢献量(Avoided Emissions)」では、鉄鋼メーカー自身の排出削減とはならないが、自社製品(鉄鋼)を社会で使用することにより、下流(トラック運転時)で生じたライフサイクル削減量を評価することが可能となる。
第2のケースとしては、鋼材としての機能は従来製品と変わらないものの、CO2排出量が少ない「グリーン鋼材」を鉄鋼メーカーが製造するケースである。この場合、自動車メーカーでは、Scope3上流の原材料の排出量削減、運輸業者では、Scope3上流の資本財の排出量削減が生じると同時に、鉄鋼メーカーでは自社Scope1,2の排出量削減が実現する。
「削減実績量(仮称)」では、この鉄鋼メーカーにおけるScope1,2排出量の変化量(差分)を「削減量」として認識し、バリューチェーン全体で評価することとなる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.



