半導体工場やEV充電設備の新設など、局地的な電力需要の増加にどう対応すべきか?:エネルギー管理(3/4 ページ)
半導体工場の新設など、電力消費量の大きな設備が設置されることで発生する局所的な電力需要増にどう対応すべきか――。電力・ガス取引監視等委員会は新たに「局地的電力需要増加と送配電ネットワークに関する研究会」を設置し、課題の整理や対策に関する検討を開始した。
ウェルカムゾーンマップ(早期供給可能エリアマップ)の公表
データセンター・半導体工場等の大規模な需要地に新たに送電するためには、既存の系統から送電線を分岐し、新たに鉄塔を建て、土地収用が発生することも想定される。需要家および一般送配電事業者のいずれの観点でも、なるべく早期に低コストで電力供給を開始することが望ましい。
このため、一部の一般送配電事業者においては、送配電ネットワークのどの地点に空き容量があり、早期に低コストで系統接続可能であるかの情報を示す、ウェルカムゾーンマップ(早期供給可能エリアマップ)を公表している。
例えば、東京電力パワーグリッドのウェルカムゾーンマップでは、面積や地価、工期等の条件から需要家自身で検索することが可能である。
また関西電力送配電では、数百MW級の大規模供給可能エリアマップや、早期(3〜5年程度)供給可能エリアマップを公開しており、データセンター等は自社の事業計画とマッチした電気の供給可能エリアを抽出することが可能となっている。
EVの電力系統での活用
EVや蓄電池は、充電時には負荷(需要)となり、放電時には供給力となる2つの側面を持ち、充放電のタイミングを調整することにより、送配電ネットワークのローカルレベルおよび全系レベルで様々な効果が期待される。
東京電力パワーグリッドでは、EVの充放電形態・制御方法・制御指令の3つの観点から検討を行い、EVの電力系統での運用方法の確立を目指している。EVリソースの運用において、EV充電タイミングのみをコントロールする「V1G」で十分であるか、放電による自家消費・逆潮流により「V2X(V2G/V2H・V2B)」まで行うかの違いにより、必要となる設備やコスト、その効果が異なることとなる。
また、EVリソースの制御方法は、電気料金型とインセンティブ型に大別され、平時は多数のリソースを電気料金型で誘導しつつ、緊急時にはインセンティブ型による追加制御を行うことが考えられる。
海外事例として、ハワイアン電力会社では、点灯帯料金が60セント/kWh、昼間帯料金が20セント/kWhという時間帯別料金メニューを試験的に1万軒で導入済みであり、来年度から全世帯に導入予定である。
また英国では、2021年にEVスマート充電規制が制定され、国内で販売される家庭用・職場用の普通充電設備はスマート機能を備えることや、ピーク時間帯以外での充電をデフォルトで設定することが義務付けられている。
英国の電力小売事業者であるオクトパスエナジーは、電気料金が安価な際に必要量を自動で充電するサービスを提供している。
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