半導体工場やEV充電設備の新設など、局地的な電力需要の増加にどう対応すべきか?:エネルギー管理(4/4 ページ)
半導体工場の新設など、電力消費量の大きな設備が設置されることで発生する局所的な電力需要増にどう対応すべきか――。電力・ガス取引監視等委員会は新たに「局地的電力需要増加と送配電ネットワークに関する研究会」を設置し、課題の整理や対策に関する検討を開始した。
中部電力パワーグリッドのEVによる系統混雑回避試算
中部電力パワーグリッドでは、太陽光発電の導入増加により、配電用変電所の稼働率(ピーク逆潮流)は上昇が続き、859箇所の配電用変電所のうち、2050年には110箇所で稼働率100%を超過する(混雑が発生する)と試算されている。このような配電用変電所に接続するEVが昼間に充電するならば、一定の混雑回避が期待される。
そこで中部電力パワーグリッドは、EV充電による系統混雑回避効果の試算を行った。
2050年断面において、中部エリアに導入されるEVを481万台(中位シナリオ)と想定し、このうち、稼働率が100%を超過する配電用変電所110箇所に導入されるEVは40万台と想定される。
試算では、これら40万台すべてのEVの充電時間を夜間から日中にシフトできたとしても、混雑回避が可能な配電用変電所は14箇所に留まる結果となった。よって、EVの活用は重要ではあるものの、これと同時に、電源立地の誘導を行うことも必要とされる。
分散型エネルギーリソースの制御量ポテンシャル
送配電ネットワークの局地的な混雑を回避・緩和するためには、分散型エネルギーリソース(DER)を活用することも有効な対策となる。
東京電力パワーグリッドでは、2050年時点の全国のDERの制御量ポテンシャルを、kW価値とkWh価値の双方から試算を行った。試算の対象となるDERは、定置型蓄電池、EV、ヒートポンプ給湯器である。試算の結果、2050年度のDERによるkW価値は約1.4億kW、kWh価値は約3.6億kWhが見込まれることが報告された。
ただし、これらのDERを実際に活用するためには、これらの機器に対応したソフトウェアや通信回線、経済的インセンティブや適切な制度的措置などを整備することが必要と考えられる。
託送料金の発電側課金と新たな割引制度の導入により、発電所については、混雑の少ない地点を自主的に選択する経済的なインセンティブが与えられることとなった。今後は、需要側についても、同様の仕組みを検討することも考えられる。
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