万が一を想定した「計画停電」への備え、2024年度以降の実施スキームが公表:エネルギー管理(4/4 ページ)
広域的な大規模停電(ブラックアウト)を回避し、電力需給のバランスを保つために実施する「計画停電」。このほど資源エネルギー庁や広域機関は非常時を想定し、一般送配電事業者10社とともに「万一の際の備えとしての計画停電の考え方」を取りまとめた。
計画停電量の広域的な分担の仕組み
2024年度以降、計画停電とは、広域予備率に基づき実施が判断されるものであるため、広域ブロック内の全エリアが計画停電量を均等に分担して、広域予備率を回復させることが原則となる。よって、計画停電量のエリア間の分担比率は、各エリアの計画停電前の想定需要に応じた比率とすることが合理的と考えられる。
ただし、需給状況によっては、広域ブロック内の全エリアを計画停電の対象にしない方が全体の停電量を低減できるケースがあるため、あらかじめ、具体的な計画停電量の分担方法が整理された。
ケースI:広域ブロックを構成するエリアが変化する場合
そもそも広域ブロックとは、地域間連系線を活用してエリア間で供給余力を融通することで均平化した予備率であるため、1つの広域ブロックを構成するエリアは固定的なものではなく、時々刻々と連系線の運用容量が増減するに従い、広域ブロックを構成するエリアも変化し得るものである。
図7の例の場合、Aエリアは9:00〜10:30の3コマ(30分単位の時間枠)において、B・Cエリアと異なる広域ブロックに属しているため、仮にAエリアで計画停電を実施したとしても、B・Cエリアの広域予備率の回復に寄与しないこととなる。
先述のとおり、各エリアは「1時間帯(2時間)」を通して同一のサブグループで計画停電を実施するものであるため、1時間帯の中で広域ブロックを構成するエリアが変化する場合には、1時間帯を通じて当該広域ブロックに属するエリア(図7ではB・Cエリア)のみを計画停電の対象とすることにより、計画停電量を必要最小限にとどめることが可能となる。
ケースII:計画停電必要量が少量
先述のとおり、計画停電とはサブグループ単位で実施するものであるため、計画停電の必要量が少量である場合、無理に広域ブロック内の全エリアで計画停電を分担実施する必要はない。
図8の例のように、広域ブロックがB・Cエリアで構成されており、1サブグループあたりの需要が2、計画停電必要量が2以下の場合、Bエリアのサブグループは計画停電を不実施とすることで、社会全体の計画停電量を低減することが可能となる。(広域ブロックが計4エリアで構成されており、計画停電必要量が6以下の場合なども同様)
万一への備えの再確認
2024年度以降、計画停電は広域的に実施されるものであることについて、現時点、必ずしも広く社会的な認知を得られていない。国は広域機関や一般送配電事業者と連携し、周知を図っていくこととしているが、一般の需要家(特に個人)は、小売電気事業者との接点が大きいと考えられる。
先述のとおり、自宅を対象とした計画停電の有無や実施時間帯を知るためには原則、供給地点特定番号が必要となるため、小売電気事業者等の役割の在り方も含め、万一への備えが十分であるか再確認することが求められる。
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