大気中CO2の直接回収技術「DAC」、日本での産業育成に向けた課題と施策の方向性(4/4 ページ)
脱炭素の実現に向けた重要技術として注目されている「DAC(Direct Air Capture)」。大気中のCO2を直接回収する同技術の普及と国内での産業育成に向け、経済産業省の「DACワーキンググループ」では今後の課題と取り組みの方向性が整理された。
官民双方でのDAC需要の拡大
DACへの需要を拡大するためには、将来的にDAC等のCO2除去(CDR)にどの程度の需要があるかを示すことは重要であり、米国では2050年時点で10億トン/年、EUでは2040年時点で4億トン/年など、国等がCDRの長期的な見通しや今後の方針を提示している。
また、DACに対する初期需要創出の一環として、米国やカナダ、デンマークでは、DACを含む炭素除去プロジェクトを政府がオフテイク購入するプログラムをリリースしたほか、一部の民間企業はファーストムーバーとして、共同購入や長期オフテイク契約等の取り組みが広がりつつある。
なお、DACCUの短期的な市場として注目されているのが、「液化炭酸ガス」や「ドライアイス」等の既存用途である。海外でも市場黎明期には、植物工場や炭酸飲料など、直接利用(CCU)を中心に需要を獲得した例がある。これらの原料となるCO2の大半(年間100万トン程度)は国内製造であるが、近年アジアからの輸入量が増加している。年間約2万トンの輸入量すべてをDACに置き換えることが出来れば、年間5億円程度の市場創出が可能となる(販売単価を24,000円/トンと想定)。
DACCS/DACCU需要の創出・拡大の方向性
GX実現のためには、多数のGX技術を対象として、あくまで「技術中立的」に市場インセンティブを与えることが重要である。他方、現時点のDACコストは日本や諸外国で導入されているカーボンプライシングの水準を大きく上回るため、早期の投資に対する収益性が低いことが課題となっている。
このような課題への対応策として、例えばカナダでは、DACやCCUSに対する税額控除を措置しており、制度初期には控除率を高く設定し、後期は引き下げることで、事業者の早期投資を促すインセンティブとしている。
今後、国はDAC産業創出に向けた課題と取り組みの方向性、ロードマップを取りまとめる予定としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
事業者のCO2排出量算定、「新・基礎排出係数」では非化石証書・J-クレジットを反映可能に
一定量以上の温室効果ガスを排出する事業者に対して、排出量の算定や国への報告などを義務付ける「SHK制度」。現在、同制度におけるCO2排出係数の算定方法の見直しが進んでいる。新たな制度においては、事業者が調達した非化石証書やJ-クレジットなども反映可能になる見通しだ。
大気中のCO2を直接吸収する「DAC」、日本での市場創出に向けた施策検討がスタート
大きなCO2除去ポテンシャルを持つ技術の一つとして期待されている「DAC(大気中のCO2を直接回収する技術)」。経済産業省では新たなワーキンググループを設置し、DACなどの普及拡大や市場創出に向けた具体策の検討を開始した。
排出量取引制度への参加を2026年度に義務化、その実現に向けた法的課題の論点
企業などが排出する炭素量を取り引きできる「排出量取引制度(ETS)」。現在国内でも試行的に導入が始まっているが、正式な制度化に向け、法的な観点からの整理を行う検討会が設置された。

