「GX2040ビジョン」の策定に向けた論点――国力を左右するエネルギーの将来戦略:第12回「GX実行会議」(5/5 ページ)
グリーントランスフォーメーション(GX)の実現に向けた効率的な国内投資の後押しを目指し、国は長期視点での「GX2040ビジョン」の策定を進めている。第12回「GX実行会議」では、同ビジョンの策定に向けた4つのフレームワークに基づくさまざまな論点が整理された。
フレームワークIV.グローバル認識・ルール
論点9. アジアの視点も加えた体系的・総合的なルール形成
アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)のもと、エネルギートランジションのロードマップ策定支援や、脱炭素技術に関する人材育成、日本発の省エネ・脱炭素機器導入拡大に資する標準などの制度設計等に取り組む。また、トランジションファイナンスのアジア展開に向けて、金融機関に技術的知見を提供する「技術リスト(Technology List and Perspectives for Transition Finance in Asia」の改定作業を進める。
論点10. 欧米の情勢も踏まえた現実的なトランジションの必要性
欧州や米国では、グリーンな産業に対する補助金や税額控除といった金銭的支援策を講じているが、インフレによる開発費の増大や化石燃料価格の低下により、域内におけるグリーンな製品の市場停滞も生じている。
脱炭素と経済成長の両立を図るため、エネルギー多消費産業の海外流出防止を念頭に、GX×DXなどによる技術革新を進展させ、海外との相対的なエネルギー価格差を縮小させる。また、GX製品を含む日本の高付加価値製品による海外市場開拓を加速させる。これらを踏まえ、2040年を見据えたエネルギー需給構造の検討を進める。
従来以上に、エネルギーの将来戦略が国力を左右する時代であるとの認識のもと、GXの加速が求められる。
令和7年度GX関連概算要求(案)
GX経済移行債を活用した予算支援については、国による複数年コミット(国庫債務負担行為等)を基本とし、総額1.6兆円規模(令和7年度:1.2兆円規模)の投資促進策とする。
2023年12月に取りまとめられた「分野別投資戦略」を踏まえ、継続事業を着実に実施するとともに、新規事業等については、GX2040ビジョンの検討と一体的に、専門家WGで具体化を進める予定である。
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