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企業の排出量取引制度、2026年度の導入へ本格的な制度検討がスタート第1回「GX実現に向けたカーボンプライシング専門WG」(5/5 ページ)

国のGX推進戦略において2026年度の本格導入が計画されている排出量取引制度。国は新たに「カーボンプライシング専門ワーキンググループ」を設置し、排出量取引制度の具体化に向けた検討を開始した。

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排出量取引制度の取引参加者

 排出量取引制度では、排出枠の現物取引のほかにデリバティブを許容するか否か、取引参加者を実需家(制度対象者)以外にどこまで広げるかが論点となる。

 ETSは、政府等が排出枠のオークションを実施する一次市場と、発行済み排出枠の現物やデリバティブ取引を行う二次市場に大別されるが、EU-ETSでは一次市場・二次市場ともに制度対象事業者以外の仲介事業者等も取引に参加可能である一方、韓国は仲介事業者の参入を一部制限している。


表5.EUと韓国の排出枠市場と取引参加者 出典:GX実現に向けたCP専門WG

 排出枠に限らず、市場において価格発見機能が発揮されるためには、十分な流動性を確保することが重要である。実需家(制度対象者)以外に取引参加を許容することは、マネーゲーム的な市場の攪乱(かくらん)を懸念する意見もあるが、実需家のみが参加する市場では、取り引きが一方向に集中しやすく、価格が乱高下するおそれもある。なお、「市場操作」の監視や厳格な処罰は、参加者をどのように設定しようとも、市場運営における必須条件である。

 K-ETSでは、制度開始当初は義務対象者のみが取引可能であったが、取引量の低迷が続いたため、市場参加者の拡大等の改革を実施したことにより、取引量が徐々に増加した。今後はデリバティブ市場の開設も予定している。

 今後、日本のGX-ETS第2フェーズ開始に向けて、制度の黎明期における取引秩序形成の観点から、取引参加者の範囲や取引所のあり方等について、検討を行う予定としている。

今後の進め方

 排出量取引制度はすでに多数の国等で導入済みである。国内でもこれまでに同様の審議会が何度も立ち上げられ、すでに議論は尽くされていると思われる。今回のCP専門WGでは、12月頃の論点整理とりまとめに向けて、検討を深める予定としている。

 EU-ETSが開始された2005年とは異なり、現在では直接排出(スコープ1)、間接排出(スコープ2)に留まらず、スコープ3も含めたサプライチェーン全体での排出削減が重視されている。排出量取引制度だけでは解決が難しい問題であると思われるが、後発の強みを生かしたETSを設計することが期待される。

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