太陽光発電設備の「義務的リサイクル制度」、創設に向けた検討を開始:第1回「太陽光発電設備リサイクル制度小委員会」合同会議(2/3 ページ)
国内で導入が広がった太陽光発電。将来、大量に発生する廃棄設備の適切なリユース・リサイクルの実現が大きな課題となっている。そこで環境省や経産省では新たな委員会を設置し、実効性のある適切なリサイクル制度の創出に向けた検討を開始した。
太陽電池モジュール処理の現状
太陽光発電設備の撤去に際しては、電気工事士等が携わる必要がある。また太陽電池モジュールは、住宅用・事業用を問わず、解体・撤去といった事業活動に伴い排出されるため、基本的には「産業廃棄物」に該当する。太陽電池モジュールは、アルミ枠やガラス、樹脂製バックシートから構成されているため、一般的に産業廃棄物の品目上は、「金属くず」「廃プラスチック類」及び「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」の混合物として取り扱われる。
現時点、太陽光発電設備の廃棄はわずかであるため、廃棄等太陽電池モジュールの排出量(回収量)も少量であり、環境省が実施したアンケート調査によれば(2022年度)、現時点の排出要因は、不良品や災害等によるものが、それぞれ約3割を占めている。また、回収量全体のうち、約2割がリユースされ、約5割がリサイクルされている。
太陽電池モジュールのリサイクルに際しては、まずカバーガラスとセルを含むバックシートを物理的処理等により分離することが一般的であり、分離されたアルミフレーム、カバーガラスは、素材ごとにマテリアルリサイクルされている。バックシートに含まれる金属やプラスチックのうち、銀や銅は精錬業者において抽出されるが、近年の技術革新により、有価金属である銀の含有量が減少傾向にある。このため、銀含有量が少ない太陽電池モジュールの回収が増えると、精錬業者の処理コストとのバランスから、廃棄太陽電池モジュールの有価性を維持することは困難になる可能性がある。
また現時点、プラスチックやシリコンは熱回収されているため、プラスチック等のマテリアルリサイクルの促進が課題とされている。重量の約6割を占めるガラスについては、より付加価値の高いフロート板ガラスへのリサイクル技術の開発が進められている。
太陽光発電設備の適正な処理に向けた既存制度
FIT/FIP制度を利用する太陽光発電設備については、再エネ特措法の改正(2020年6月)により、10kW以上の事業用太陽光発電設備を対象として、廃棄等費用を原則、源泉徴収的に外部積立てを行う制度が開始された。積立時期は、調達期間/交付期間の終了前10年間(20年間の調達期間/交付期間のうち、後半の10年間)であり、FIT制度開始から10年が経過した2022年7月から、FIT制度初期の事業の積立てがすでに始まっている。
現在、非FIT/FIPの再エネ電源が増加していることを踏まえ、すべての再エネ発電設備の適切な廃棄・リサイクルを担保する仕組みが必要とされている。
また環境省は、発電事業者やパネルの解体・撤去事業者等の関係者向けに、パネルの撤去から処分に至るまでの留意事項や事例を整理した「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン」(2016年第1版、2018年第2版、2024年第3版)を策定しているほか、「太陽電池モジュールの適切なリユース促進ガイドライン」を2021年5月に公表し、リユース可能な例や、より正確な性能を把握するための検査例を掲載している。
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