26年度から始まる排出量取引制度 CO2排出量10万トン以上の法人が対象に:第4回「GX実現に向けたカーボンプライシング専門WG」(2/4 ページ)
政府が2026年度から本格的な導入を目指している「排出量取引制度」。運用開始に向け制度設計の検討が進められているが、直近のワーキンググループでは対象事業者や排出量枠の割当など、制度の骨格となる部分の素案が提示された。
排出量取引制度(ETS)の対象者
2050年カーボンニュートラルに向けては、排出量取引制度(ETS)だけがその達成手段というわけではないが、国内CO2排出量のある程度大きな比率をETSでカバーすることが適切と考えられる。GX-ETS第1フェーズでは700社超が参加しており(2024年3月末時点)、これは日本の温室効果ガス排出量の5割超をカバーする規模となっている。
諸外国の事例を見ると、ETSの対象には2つの考え方があり、EU-ETSは設備/施設を対象として、韓国のK-ETSは事業者/事業所を対象としている。また、ETSでは義務履行の検証等の事務手続きや行政コストが発生するため、一般的に、排出量の大きな設備や企業に対象を限定している。
このような考え方に基づき、EUや英国では直接排出量2.5万トン以上の設備・施設を対象として、韓国では原則として直接・間接排出合計で12.5万トン以上の企業を制度対象としている。
日本では、省エネ法や温対法(算定報告公表制度:SHK制度)などの既存制度や、GX-ETSにおいて企業単位での取組を求めていることから、ETS第2フェーズの制度対象についても「法人」とする。また、諸外国制度と同程度の規模の排出源を捕捉する観点から、対象者の裾切基準を、CO2直接排出量10万トンとする。
WG事務局の推計によれば、EUのような直接排出2.5万トンに相当する事業所を保有する国内企業における「法人」単位での標準的な直接排出量は9.5万トン程度であり、韓国のような直接排出・間接排出合計で12.5万トンとなる法人は、直接排出のみでは9万トン程度に相当する(直接:間接比率が概ね7:3)ため、対象規模(裾切基準)を10万トンとすることは合理的と考えられる。
これにより、ETS第2フェーズの対象事業者数は300〜400社程度、カバー率は日本全体のGHG排出量の60%近くと見込まれ、諸外国のETSに遜色のないレベルとなると考えられる。
なお、温対法に基づく現行のSHK制度では、燃料の使用(直接排出)と電気・熱の使用に伴う排出量(間接排出)を合算したエネルギー起源CO2排出量が報告・公表されているが、今後は直接排出と間接排出を分離報告するよう、報告様式の見直しが進められている。
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