26年度から始まる排出量取引制度 CO2排出量10万トン以上の法人が対象に:第4回「GX実現に向けたカーボンプライシング専門WG」(3/4 ページ)
政府が2026年度から本格的な導入を目指している「排出量取引制度」。運用開始に向け制度設計の検討が進められているが、直近のワーキンググループでは対象事業者や排出量枠の割当など、制度の骨格となる部分の素案が提示された。
ETS排出枠の割当は分野別に異なる方式を適用
排出量取引制度では、目標水準の算定方法として、基準年度における製品生産量等に業種毎の目指すべき排出原単位を乗じる「ベンチマーク方式」と、基準年度における排出実績に一定の削減率を乗じる「グランドファザリング方式」がある。
一般的に、ベンチマーク方式では、早期に(過去に)排出削減に取り組んだ事業者が正当に評価されるといったメリットがある一方、業種によってはベンチマーク(生産量あたりの排出量基準)そのものの策定が困難という課題がある。
よって第2フェーズの排出枠割当方式としては、特に業種特性を考慮する必要性の高いエネルギー多消費分野では業種別のベンチマークに基づいた算定を行い、ベンチマークの策定が困難な分野については、グランドファザリングによる割当とする、2つの方式を併用することとした。
ベンチマーク方式では図3のように、Y年には上位◯%、Y+3年には上位◯%のように、次第に基準を厳しくしていくこととする。
排出枠割当における配慮
グランドファザリング方式の場合、早期に(過去に)削減努力を行った企業ほど、短期的にはさらなる削減が困難という課題があるため、EU-ETSやK-ETSにおいても一定の配慮がなされている。よって、日本のETSでもグランドファザリングによる割当を行う場合には、過去の削減努力を勘案して割当量を調整する。
また、どのような企業においても、省エネの取り組み強化などによる地道な排出削減努力は重要であるが、いわゆる”Hard to abate”産業においては、カーボンニュートラルに向けた非連続な技術革新が不可欠である。例えば、鉄鋼高炉分野における水素直接還元技術は、2050年本格導入を目指した非常に時間軸の長い技術開発であり、当面はCO2削減効果が発現しない研究開発に対し、巨額の投資が必要とされている。
そこで、こうした中長期的な投資のための原資が失われることのないよう、割当量の算定に際して、各社が実施するGX関連の研究開発投資額等について、一定の範囲で勘案するための仕組みを設けることとする。
また、世界全体での排出削減を実現する観点からは、カーボンリーケージ(産業の国外移転等)の回避は重要な課題であり、諸外国制度においても、リーケージリスクの高い業種に対する緩和措置等が実施されている。よって、日本のETSでも排出枠の割当に際してリーケージリスクを抑制するための措置について検討を行うこととした。
また、ETS対象事業者が事業所・設備の増強・新設・廃止等を行った場合、排出量が大きく変動するが、GX実現に向けて必要な新規事業への参入や事業拡大を、ETSが阻害することは避ける必要がある。よって、諸外国制度も参考として、事業所・設備の増減等が生じた際は、割当量の調整を行うこととする。
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