ペロブスカイト太陽電池の政府戦略 2040年20GW導入・発電コスト10円を目標に:「次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会」(2/4 ページ)
次世代太陽電池として大きな注目が集まっているペロブスカイト太陽電池。国としての普及施策を検討してきた官民協議会は、このほど将来の導入量や発電コストの目標などをまとめた。
ペロブスカイト太陽電池 発電コスト推計
現在、国はGI基金「次世代型太陽電池の開発プロジェクト」において、ペロブスカイト太陽電池の技術開発を支援しており、2025年度までに20円/kWh、2030年度までに14円/kWhが可能となる技術の確立を目指している。今後、生産規模の拡大による製造装置の稼働率の向上等の規模の経済によるパネルコストの低減や、稼働年数や変換効率の向上によるLCOE(均等化発電原価)の低下が見込まれる。
官民協議会事務局では、次世代型太陽電池メーカーのコスト見通しやFIT/FIP案件の定期報告をもとに、2040年に一定規模の年間生産体制を実現した際のコスト諸元を表2のように想定したところ、発電コスト(政策経費を含まない)は15円/kWh台半ばと試算された。ペロブスカイト太陽電池は壁や窓等にも設置できることが特長であり、この場合は日射量及び設備利用率の減少を考慮する必要があるが、本試算では同一条件下における発電コストを算出するため、屋根に設置した場合を想定している。
表2のコスト諸元は、2030年までの早期にGW級の生産体制構築後、2040年に1GW程度の年間生産体制を実現し、2040年時点での累積生産量は10GW程度と仮定したもの(図3)である。
設備費の習熟率をシリコン太陽電池と同様の20%と仮定する場合、発電コスト10円/kWh水準の達成に必要な設備費(約6万円/kW)を実現する累積生産量は、80GW強と試算された。よってこのようなコスト低減を進めるためには、国内需要だけでなく、相応の海外需要を獲得することが必要と考えられる。
なお現在、屋根設置太陽光発電設備の資本費全体(23.7万円/kW)のうち施工コストは6.9万円/kW(29%)を占めているため、太陽電池だけでなく施工コストの削減も求められる。
累積生産量10GWや80GWは確かに大きな数字であるが、すでにシリコン系太陽電池では、年間10GW以上の生産能力を有する工場も多く存在しており、このような企業であれば、1社・1年で生産可能な数量であることには留意が必要である。
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