ペロブスカイト太陽電池の政府戦略 2040年20GW導入・発電コスト10円を目標に:「次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会」(3/4 ページ)
次世代太陽電池として大きな注目が集まっているペロブスカイト太陽電池。国としての普及施策を検討してきた官民協議会は、このほど将来の導入量や発電コストの目標などをまとめた。
ペロブスカイト太陽電池の需要推計
発電コストの低減と需要の増加には、一定の相関性があると考えられる。官民協議会事務局では一定条件のもとで、ペロブスカイト太陽電池が設置可能な面積等と経済性を考慮した、ペロブスカイト太陽電池の導入ポテンシャルを推計した。
試算では、太陽光発電1m2(日射強度 1,000W/m2)当たりに対して発電できる容量を、屋根・壁面:150W/m2(=変換効率15%)、窓:75W/m2(=変換効率7.5%)と条件設定している。
国内の導入ポテンシャルを、設置場所別に発電コストの大小に応じて推計したものが図5である。日射量及び設備利用率等の違いによる経済性の観点から、まずは屋根から導入が開始され、発電コストの低下に伴い、垂直面である壁面や窓への導入が進んでいくことが見込まれる。
例えば発電コスト15円/kWhの場合、図5のように国内の導入ポテンシャルは25GW程度と見込まれる。なお2024年3月末時点、従来型太陽光発電の累積導入量(住宅/非住宅。屋根設置/地上設置いずれも含む)は約74GWである。また、タンデム型ペロブスカイト太陽電池が早期に商用化された場合、既設のシリコン太陽電池からのリプレースも見込まれる。FIT/FIP期間終了時点ですべてがタンデム型にリプレースされると仮定する場合、2040年までの累積リプレース容量は約67GW(既設導入容量+変換効率改善分)と推計されている。
また、2040年時点における海外での需要量は、発電コストが10〜14円/kWhの場合は約500〜1,000GW程度、発電コスト10円/kWhの場合、TW(テラワット)を超える需要量が見込まれる。
「次世代型太陽電池戦略」の概要
以上の検討を踏まえ、官民協議会では「次世代型太陽電池戦略」を取りまとめた。当面の間、次世代太陽電池とはペロブスカイトであることを前提として、シリコン系太陽電池産業の反省も踏まえ、官民が連携し、世界に引けを取らない「規模」と「スピード」で、量産技術の確立・生産体制整備・需要創出を三位一体で進めることとする。
まずは、2025年度から国内市場の立ち上げを進め、2030年までの早期にGW級の生産体制構築を目指し、2040年には国内で20GW程度(大幅なコスト低減等が進んだ場合は40GW以上)、海外では500GW以上の導入を目指す。価格面では、2030年代には20〜14円/kWh、2040年には10〜14円/kWh以下を目指す。
初期需要の創出のためには、国の施設等の公共部門における率先導入が重要である。現在国は、2030年には設置可能な建築物等の約50%、2040年には設置可能な建築物等の100%に太陽光発電設備を設置することを目標としているが、その内数としてのペロブスカイトの導入目標を検討予定である。
また調達価格等算定委員会では、FIT/FIPにおけるペロブスカイト太陽電池を対象とした新設区分の創設の是非について検討を行っている。
知的財産については、特許とブラックボックス化した全体の製造プロセスを最適に組み合わせつつ、サプライチェーン全体で技術・人材の両面から管理を行う。なお同戦略は、「第7次エネルギー基本計画」に反映予定としている。
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