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不確実性が増す国際情勢 2040年度のエネルギーミックスを考える上での複数シナリオ第66回「基本政策分科会」(2/4 ページ)

政府は新たなエネルギー基本計画などの策定に向けて、日本が目指すべき2040年度頃の「GX2040ビジョン」の検討を進めている。その議論を担う基本政策分科会では、さまざまな研究機関などから、今後のエネルギー情勢に関する複数の将来シナリオが提示された。

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国立環境研究所によるモデル分析結果

 国立環境研究所では、応用一般均衡モデルを用いて将来におけるマクロフレームを設定し、技術選択モデルにより推計した将来のエネルギー需要量・電力需要量に基づき、電源計画モデルで発電設備構成及び供給構成を推計している。

 なお、専門機関による分析はいずれも比較可能性確保のため、2030年度46%削減から2050年ネットゼロへの直線的削減が進むケースを基本ケースとしており、この点では各機関による違いはないことに留意願いたい。例えば国立環境研究所の分析では、「革新技術+社会変容」の3つのケース(青線)のGHG排出量削減経路がほぼ重なっており、十分に技術革新が進まない「技術進展」ケース(赤線)のみが、異なる経路として想定されている。


図3.国立環境研究所の分析 GHG排出量削減経路 出典:国立環境研究所

 国環研の分析では、省エネは進展するものの、電化率の上昇や新たなICT需要の増加、水素等の国内生産により、電力需要は増加すると想定されており、「技術進展」ケースを除いては、2050年までに脱炭素電源100%を実現する分析結果となっている。

ただし、2050年時点の「再エネ高位ケース」でも電力再エネ率は7割程度であり、水素等の新燃料やCCS付火力、原子力が一定程度活用される分析結果は、後述する他の専門機関においても同様である。


図4.発電電力量【国立環境研究所】 出典:国立環境研究所

地球環境産業技術研究機構(RITE)によるモデル分析結果

 地球環境産業技術研究機構(RITE)の温暖化対策評価モデルDNE21+では、エネルギー輸出入の量・価格の整合性を保ちながら、世界全体と日本を同時に分析評価できる特徴がある。このため、仮に諸外国が非常に高い削減目標を掲げて水素を大量に消費する場合、日本の水素輸入量が減少するといったかたちで分析結果に反映されることになる。

RITEのモデル分析による発電電力量及び再エネ率は図5のとおりである。なお、再エネポテンシャルとしては、太陽光742TWh/年、浮体式洋上風力1,613TWh/年など、日本の電力需要の2倍以上を見込んでいるものの、モデル分析の結果として、2040年再エネ比率は4〜5割程度となっている。

 また、CO2以外のGHG排出やhard-to-abateな産業部門からの非エネルギー起源CO2排出等があるため、2040年73%削減を達成するためには、2040年時点で発電部門のCO2排出量をほぼゼロとすることが経済的という結果となっている。


図5.発電電力量【地球環境産業技術研究機構(RITE)】 出典:RITE

 またRITEでは、温暖化対策を想定しないベースラインと比較して、2040年▲73%・2050年カーボンニュートラルを前提とした「成長実現シナリオ」と、2040年▲56%・2050年▲74%に留まる「排出上振れシナリオ」のそれぞれにおける産業活動やGDPの変化を分析している(表2)。

 「成長実現シナリオ」は排出制約が強いため、一見、経済成長に不利に見えるが、CO2削減対策技術の国際的な優位性による海外市場獲得効果(+5%程度)が加わることで、「排出上振れシナリオ」やベースラインよりも、経済成長率が高まる分析結果となった。

 RITEでは、日本のGX技術・製品の海外展開が加速すれば日本経済の成長に大きく寄与する可能性があるため、いかなるシナリオ下においても海外市場獲得の取り組みは重要と結論付けている。


表2.成長実現・排出上振れシナリオにおける生産量・GDPの変化 出典:RITE

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