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不確実性が増す国際情勢 2040年度のエネルギーミックスを考える上での複数シナリオ:第66回「基本政策分科会」(4/4 ページ)
政府は新たなエネルギー基本計画などの策定に向けて、日本が目指すべき2040年度頃の「GX2040ビジョン」の検討を進めている。その議論を担う基本政策分科会では、さまざまな研究機関などから、今後のエネルギー情勢に関する複数の将来シナリオが提示された。
日本エネルギー経済研究所によるモデル分析結果
日本エネルギー経済研究所では、費用最適化型エネルギーシステムモデル「IEEJ-NE_Japan」を用いて、CO2排出制約の下で経済合理的なエネルギーミックスを分析している。電力需給はモデル内で1時間値で表現し、再エネの時間変動性や系統統合費用を考慮している。
エネルギー全体の脱炭素化を進めるためには、エネルギー効率の向上(省エネ)と発電部門の脱炭素化を前提に、需要の電力化を進める必要があるが、最終エネルギー消費の半分程度は電力以外の燃料消費が残る分析結果となった。
電力需要は長期的に増加が見込まれるが、その最適な構成は技術単体だけでなく、エネルギーシステム全体でみた総システムコストによって決まるため、前提条件次第で大きく変動し得る。また、水素・アンモニア等のコストも低減すると想定しているため、シナリオ次第では、2050年の再エネ「比率」が低下することも起こり得る。
日本エネルギー経済研究所では、モデル試算には不確実性があるため、多様なオプションを追求し、バランスのとれたエネルギーミックスを想定することが望ましいと述べている。
本稿では電力を中心に各専門機関の分析結果を報告したが、水素等の新燃料やCCS等も含めた、エネルギーシステム全体での脱炭素化及び産業競争力の両立を実現する次期エネルギー基本計画の策定が期待される。
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