地域間連系線の運用容量を拡大 「中部関西間」と「中国九州間」の2カ所で:第4回「将来の運用容量等の在り方に関する作業会」(1/3 ページ)
異なるエリアをつなぐ地域間連系線。「中部関西間連系線(中部向き)」と「中国九州間連系線(九州向き)」について、その運用容量の制約により一部取引市場での分断が発生していることから、容量を拡大する方針が決まった。
地域間連系線の「運用容量」は、「熱容量」「同期安定性」「電圧安定性」「周波数維持」の4つの制約要因を考慮して設定されており、2024年度時点における全国の地域間連系線の運用容量制約は図1の通りである。
送電線のルート断故障(N-2故障)等により需給バランスが大きく崩れると、片側の系統では供給が需要を上回ることにより系統周波数が上昇し、もう片側では供給が需要を下回ることにより系統周波数が低下する。系統周波数が発電機の運転可能な範囲を下回ると、発電機は解列し、発電機の解列は周波数低下をさらに悪化させるという悪循環に陥り、大規模停電に至るおそれもある。このため中部関西間連系線等では、送電線N-2故障においても系統周波数を安定的に維持する観点から、「周波数維持制約」による運用容量が設定されている。
しかしながら運用容量が制約となり、スポット取引(kWh)や容量市場(供給力kW)の市場分断が増加していることから、一般送配電事業者と広域機関では、運用容量の拡大策について検討を行ってきた。
「将来の運用容量等の在り方に関する作業会」の第4回会合では、周波数維持が制約となっている「中部関西間連系線(中部向き)」と「中国九州間連系線(九州向き)」について、負荷制限の織り込み変更等による運用容量の拡大が報告された。
負荷制限の織り込みによる運用容量の拡大
地域間連系線の運用容量拡大策としては、多ルート化を含む系統増強が正攻法であるものの、膨大な費用・工期が掛かることや、そもそも施工が困難といった課題がある。このため、運用面での対策の一つとして負荷制限の折り込みが検討されている。図2の場合、ルート断(N-2)故障発生によりB系統では100不足するため、このままでは大規模停電に至るおそれもあるが、負荷制限を実施することにより、需給バランスの維持が可能となる。
周波数制約により運用容量が設定されている連系線の場合、仮にB系統で50の負荷制限を追加可能であれば、運用容量を150へと拡大することが可能となる。これにより、平常時には安価な電源の広域的活用による経済性の向上、緊急時にはブラックアウトの回避などの効果が期待される。
ただし稀頻度とはいえ、負荷制限の対象となる需要家は突然の停電を被ることになるため、社会的影響の大きい対策であることには留意が必要である。
また、負荷制限により遮断される負荷は、一般的に変電所の送電線あるいは変圧器単位で管理されている。従来の潮流はほとんどがダウン潮流(基幹系統からローカル系統、配電系統へ流れる向き)であったが、再エネ電源の連系拡大に伴い、アップ潮流(配電系統からローカル系統、基幹系統へ流れる向き)に変化している。このようなアップ潮流の箇所を負荷制限により遮断した場合、系統の需給アンバランスを改善するどころか、むしろ悪化させてしまう。日本では再エネの大半を太陽光が占めるため、太陽光が発電する昼間には負荷制限箇所が多数必要となり、夜間帯と比べて広範囲で停電することも考えられる。
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