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2040年の発電コスト検証のとりまとめ 再エネは「統合コスト」も考慮へ:第5回「発電コスト検証WG」(6/6 ページ)
第7次エネルギー基本計画の策定に向けて、将来の各電源の発電コストの検証が進んでいる。第5回「発電コスト検証ワーキンググループ」ではその試算が公開された。本稿ではその中から、主要な電源のコスト検証結果をまとめた。
統合コストの一部を考慮した発電コストを検証
電力系統の中で特定の電源が増加すると、電力システム全体を安定させるためのコストも増加する。調整力確保のための電源ラインアップの変化によるメリットオーダーの不達成、頻繁な起動停止、揚水発電・蓄電池の充放電ロス、再エネ出力制御の増加などが要因として考えられる。これらはモデルプラント方式のLCOEでは考慮されないコストであるため、このような「統合コスト」についても検討を行う必要がある。
発電コスト検証WGでは、ある構成の電力システムに各電源を微小追加したとき、電力システム全体に追加で生じる統合コストを、追加した電源の有効な発電量で割り戻すことにより、kWh当たりのコスト(=LCOE*)を算出した。LCOE*の上昇は太陽光等の変動性電源において顕著であるが、どのような電源でも起こり得るものである。
分析では、変動性再エネ電源の設備容量が4割・5割・6割のケース(A,B,Cケース)を設定した。図9の灰色の横棒の数値は、通常のLCOEである。
また、ヒートポンプ(HP)給湯器の沸き上げやEV充電による大規模な需要シフト(デマンドレスポンス)を想定(HP給湯器:2,500万台、EV:2,600万台)することにより、LCOE*が抑制されることが確認された。
今後は、水素製造(水電解)装置などの新たなDRリソースの増加による、LCOE*の抑制が期待される。
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