検索
ニュース

太陽光発電の最新コスト動向 新規導入の低迷を受け「初期投資支援」の検討も第100回「調達価格等算定委員会」(4/5 ページ)

第100回「調達価格等算定委員会」で、2026年度の太陽光発電の調達価格などの試算が公表。また、昨今の新規導入量の低迷に対する対策として、「初期投資支援スキーム」など新たな施策の検討も行われた。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

「初期投資支援スキーム」の導入を検討

 太陽光発電の新規導入が低迷している理由として、地域との共生の難しさや経済的な適地の不足などが指摘されている。よって、屋根設置太陽光発電に期待が寄せられており、これまでFIT/FIP制度でも、2023年10月から「屋根設置区分」を設定してきた。

 しかしながら、屋根に太陽光を設置する住宅・建築物を所有する主体とは、個人や中小事業者が多く、財務基盤や与信が小さい傾向にあるため、太陽光発電の投資回収年数の長さが導入障壁の一つであった。

 このため資源エネルギー庁では、早期の投資回収を可能とする「初期投資支援スキーム」の検討を行った。

投資回収期間を短くする2つの方法

 太陽光発電の投資回収期間を短くするためには、単純に「FIT調達価格を上げる。ただしそれに応じて調達期間を短くする」という方法があり、現行の住宅用太陽光(10kW未満)では、まさにこの方法(調達期間10年)が採用されている。

 もう一つの方法は、調達期間そのものは維持しながら、前半の価格を高く/後半の価格を低くする「階段型の価格設定」という方法がある。


図5.初期投資支援のための2つの形態 出典:調達価格等算定委員会

 結論から言えば、新たな「初期投資支援スキーム」では、住宅屋根設置については前者の方法(図5の左)を採用し、事業用太陽光屋根設置については、後者の方法(図5の右)を採用することとした。

 具体的には、住宅屋根設置についてはFIT調達期間を4年に短縮し、現行の15円/kWhから初期投資支援価格として24円/kWh程度へと増額する。事業用太陽光屋根設置については、初期5年間を19円/kWh程度へと増額する。(残り15年間は現時点未定)

 いずれの方法であっても、メリットだけでなく、表4のようなデメリットや課題があり、これらはトレードオフの関係にある。

 短期間で初期投資額の多くが回収できるならば、「使い捨て」に近い意識が働き、メンテナンス費用を惜しんで適切なメンテナンスを行わず、長期の発電継続が困難となることも懸念される。

 また、高い価格での売電額を最大化させるために、系統への逆潮流量を最大化させるインセンティブが働くため、再エネ出力制御の増大を招くおそれもある。仮にFIT制度ではなく、イニシャル費用への補助金で支援する仕組みの場合、当初から自家消費(蓄電等を含む)を最大化させるインセンティブが働くと考えられる。

 なお、今回の「初期投資支援」は屋根設置だけが対象であるため、通常は廃棄等費用は(源泉徴収の有無を問わず)最終的には建物所有者自身が負担する必要があり、一定の規律は確保されると考えられる。


表4.初期投資支援スキームのメリット/デメリット 出典:調達価格等算定委員会

 住宅屋根の卒FITが早まることは、FIT特例③の適用電源の抑制や、非FIT電源としての非化石価値の流通など、太陽光の自立を促す一歩となると考えられる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る