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2026年度から始まる「排出量取引制度」 制度全体の論点と今後の展望第5回「GX実現カーボンプライシング専門WG」(5/6 ページ)

2026年度から本格的にスタートする排出量取引制度。第5回「GX実現カーボンプライシング専門WG」では、同制度全体に関する論点が取りまとめられた。本稿ではその概要を紹介する。

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排出枠の取引と価格安定化措置

 ETS対象者は、市場取引(調達・売却)により、排出枠の過不足を調整する。排出枠は、法制度のために政府が発行する特殊な財であり、その価格は企業が脱炭素投資の判断を行う際の指標となるため、市場における公正な価格公示機能が極めて重要である。

 よって、適正な価格形成を促す観点から、排出枠取引市場の運営は「GX推進機構」が行う。なおGX推進機構は、2028年度導入予定の化石燃料賦課金の徴収に係る事務を担うことも決定している。

 また、市場取引参加者については、制度対象者だけでなく、一定の要件に適合する金融機関等の参加を認め、市場の流動性を確保する。

 排出枠取引市場は段階的な発展を想定し、当初は現物取引のみとして、将来的には先物取引や、市場参加者の拡大、民間取引所の認可等についても検討を行う。


図9.排出枠取引市場の段階的な発展 出典:GX実現に向けたCP専門WG

 取引価格の予見可能性を高めるため、排出枠の取引価格には上限・下限を設定する。排出枠が不足した場合、対象者はあらかじめ定めた価格(上限価格)を支払うことにより、ETS義務履行を可能とする。これにより、実質的に市場価格は上限価格を超えることがなくなると考えられる。また市場価格が一定期間以上、下限を下回る場合、GX推進機構は排出枠の「リバースオークション」を実施することにより、需給バランスを機動的に調整する。

「移行計画」(仮称)の策定・公表

 ETS第2フェーズでは、制度対象者に対して、排出枠の償却義務だけでなく、2050年政府目標等を踏まえた野心的な排出削減目標の策定や、その達成に向けた対外的なコミットメントを求めることにより、脱炭素投資の着実な実施を促す仕組みとしている。

 具体的には、各社の事業計画等を反映した2030年度の直接・間接排出削減目標や、その他関連事項を記載した「移行計画」(仮称)の提出を求め、国はこれを公表することとする。

 これにより、幅広いステークホルダーが、透明性・予見性高く、対象者の削減行動がオントラックであるか否かを確認できるようになると期待される。


図10.「移行計画」(仮称)の策定・公表 出典:GX実現に向けたCP専門WG

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