日本のGX戦略をアップデート 新たな「GX2040ビジョン(案)」の内容とは?:第14回「GX実行会議」(1/5 ページ)
日本のGX(グリーン・トランスフォーメーション)の実行策について検討を進めてきた「GX実行会議」。同会議では昨今の国際情勢の変化などを受け、これまでの戦略をアップデートした「GX2040ビジョン(案)」を公表した。
産業革命以来の化石燃料中心の経済・社会、産業構造を、クリーンエネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体の変革・GX(グリーン・トランスフォーメーション)を実行すべく、国は2022年からその具体化に向けて「GX実行会議」を開催してきた。これまで同会議では、2023年2月に「GX実現に向けた基本方針」を、また2023年7月には「GX推進戦略(脱炭素成長型経済構造移行推進戦略)」を策定してきた。
一方で、ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化の影響、AI等による電力需要の増加、経済安全保障上の要請によるサプライチェーンの再構築の在り方、カーボンニュートラルに必要とされる革新技術の導入スピードやコスト低減の見通しなど、将来見通しに対する不確実性はますます高まっている。
GX実行会議ではこうした状況を踏まえ、より長期的な視点に立ち、エネルギー、GX産業立地、GX産業構造、GX市場創造について総合的に検討を加え、GX推進戦略を改定し、「GX2040ビジョン(案)」を示すこととした。
GX2040ビジョンは、事業環境の予見性を高め、日本の成長に不可欠な付加価値の高い新たな産業の創出や産業競争力を支える基幹産業のサプライチェーンの高度化につながる国内投資を後押しするともに、海外との相対的なエネルギーコスト差を抑制し、雇用に配慮した「公正な移行」を進め、アジアを中心とした世界の脱炭素に貢献する姿を描いている。
目指すGX産業構造
日本では過去30年デフレマインドが広がり、企業の国内投資が停滞した結果、GDPや賃金上昇率はOECD内でも低位にとどまってきた。
GXの取り組みはこうした状況を打破する大きなチャンスであり、GX分野での投資を通じて、革新技術を生かした新たなGX事業が次々と生まれ、日本の強みである素材から製品に至るフルセットのサプライチェーンが、脱炭素エネルギーの利用やDXによって高度化された産業構造を目指す。これにより、国内外の有能な人材・企業が日本で活躍できる社会を目指す。
GX産業の拡大のためには、国内市場のみに閉じることなく、経済安全保障に配慮しつつも最初から世界市場で戦うことを念頭に、スピードと規模を追求する必要がある。
このため、10年間で20兆円規模の先行投資支援と150兆円規模の官民投資を呼び込むための「成長志向型カーボンプライシング構想」を、予見性を確保しながら、段階的に導入拡大していく。
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