太陽光発電のケーブル盗難対策 スクラップ買取業者に届出や本人確認を義務付けへ:第3回「金属盗対策に関する検討会」(2/4 ページ)
太陽光発電事業者を悩ませているケーブル盗難問題。警察庁ではその対策として、届出制度や本人確認の義務化など、金属スクラップの買取業者に向けた新たな施策を取りまとめた。
現在の金属スクラップ売買に関する法規制
盗まれたケーブルは、金属スクラップ(金属くず)として、窃盗犯から金属くず買取り業者に転売されることになる。近年、金属盗が急増している背景の一つとして、金属くず売買に関する法規制が十分ではないことが指摘されている。
「廃棄物」であれば、これを業として扱う場合には廃棄物処理法の規制が及ぶが、金属くずのような有価物を扱う場合の、国による法規制は現時点限定的である。
東南アジアや中国等の諸外国では、リサイクル業は許認可制になっているため参入のハードルが高いのに対して、日本では金属リサイクルや買い受けに関する許認可制度がなく、参入のハードルは低い。このため、他国での輸入規制の動きも背景に、日本で金属リサイクル業を始める海外の事業者が増加しつつある。
現在、金属くずに関する国内の法規制としては、「古物営業法」(許可制)がある。古物営業法では、取引相手の確認義務(総額1万円未満の取引を除く)のほか、取引の記録義務、盗品の疑いがある場合には、警察への申告義務も課されている。
ただし、切断された金属ケーブルは通常、「廃製品」とみなされ、「古物」(本来の用法に従って使うもの)に該当しないと考えられるため、古物営業法の対象外であり、これらいずれの義務も該当しない。このため、窃盗犯からすると、盗品の売却が容易な状態となっており、これが窃盗犯の動機を強化していると考えられる。
これとは別に、全国の17道府県において、いわゆる「金属くず条例」が制定されている。金属くず条例に基づく許可又は届出の件数は17道府県合計で34,794件に上るが、全国で何社のスクラップ業者があるかは、業界団体でも把握できていない状態である。
金属くず条例の対象事業者は、取引相手方の確認義務や、盗品の疑いがある場合の警察への申告義務、帳簿等への記載等が義務付けられている。なお、条例制定道府県であっても、その制定が古く罰則が比較的軽いため、悪質な金属くず買取り業者に対する規制の効果が限定的という課題も指摘されている。また、条例は当該県内の金属くず買取り業者のみに規制が及ぶため、他県に持ち込めば、盗品を売却可能な状態であることに変わりはない。
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