電力市場の入札不足や価格高騰の軽減策に 同時市場の導入検討が本格化:第13回「同時市場の在り方等に関する検討会」(4/5 ページ)
卸電力市場や需給調整市場を運用する中で課題となっている市場価格の高騰や調整力の調達不足。資源エネルギー庁はこの解決を目指し、電力のkWhと調整力を同じタイミングで約定する「同時市場」の本格的な導入検討を開始した。
市場価格の算定方法
前日同時市場においてkWh価格(シングルプライス)は、Three-Part Offer を元に同時最適化した電源ラインアップにおける「シャドウプライス」(系統全体で+1kWh 出力したときの価格)で算定するが、エリア内で系統混雑が発生した場合、混雑系統と非混雑系統でシャドウプライスが異なるため、その場合のkWh価格の算定方法を検討する必要がある。
またΔkW価格については、「中間とりまとめ」では、Three-Part Offer を元に機会費用・逸失利益を算出し、マルチプライスとする案を基本線としながら、適切な対価性や事業者の入札行動の変化等の観点から、シングルプライスオークション化についても引き続き検討することとしている。
検討会では、どのように市場を設計しても起動費等の取り漏れが生じうることを踏まえ、「アップリフト」として確実な回収が必要と整理された。このアップリフトについては、どのような場合に、どのような費用の取り漏れが生じるかを想定した上で、アップリフトとして回収を図るべき費用項目やアップリフトの算定方法、負担方法等を検討する必要がある。
時間前同時市場の詳細設計
現行の時間前市場ではザラバ取引が行われているが、より効率的な電源運用を目指して、前日市場と同様に、時間前同時市場を目指してその実現の可否を検討することとしている。
時間前同時市場については、その開催タイミング・回数、取引対象、入札内容の変更の考え方等について詳細な検討を行う必要があるが、今回、電源起動・出力配分ロジックの技術検証の進捗が報告された。
時間前同時市場には、「前日の時間前同時市場(翌日24時間が対象)」と「当日の時間前同時市場(当日の残り時間帯が対象)」の二つが存在し、それぞれの市場の特徴を踏まえた検証を行うことが重要である。
「前日の時間前同時市場(翌日24時間が対象)」の検証の一例として、再エネ変動(予測大外し)を模擬した10件の検証ケースにおける「収束性(計算負荷)」の確認結果は表3のとおりである。
高需要ケース、低需要ケースともに、前日同時市場の約定結果を引き継ぐことで、前日同時市場(ケース1-1、2-1)に比べ、「前日の時間前同時市場」の多くのケースでは計算時間が短くなることが確認できた。
また、「当日の時間前同時市場(当日の残り時間帯が対象)」についても、直前の約定結果を引き継ぐことや、「時間の経過に応じた計算対象期間の減少」、「発電機起動特性による起動停止対象電源の減少」により、前日同時市場に比べ、計算時間が大幅に短くなることを確認している。
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