間接送電権市場に「年間商品」を新設 最低約定価格も見直しへ:第3回「間接送電権の制度・在り方等に関する検討会」(1/4 ページ)
事業者間でエリアをまたぐ電力取引を行う際の値差リスクをヘッジすることを目的に導入された「間接送電権市場」。資源エネルギー庁では同市場へ新たに「年間商品」を導入し、対象連系線も追加する方針だ。
地域間連系線の利用は、以前は「先着優先」と「空押さえの禁止」を原則として管理されていたが、広域メリットオーダーの実現に向けて、2018年10月に「間接オークション」が導入された。これにより、事業者間でエリアをまたぐ電力取引を行う場合、それが相対契約であっても日本卸電力取引所(JEPX)スポット市場を介することが必須となった。
このとき、連系線混雑により市場分断が発生し、スポット市場約定価格がエリアによって異なる場合、当事者間の清算によって相対契約の価格を実現することができない。このため、エリア間の値差リスクをヘッジする仕組みとして、2019年4月にJEPXに「間接送電権市場」が創設され、間接送電権の取り引きが開始された。
ただし、以前から「先着優先」に基づき連系線を利用してきた事業者に対しては、「経過措置」が与えられ、実質的にエリア間値差リスクを負わない状態であったが、2025年度末にはこの経過措置も終了し、事業環境の大きな変化が想定されている。
これまで間接送電権は「週間商品」のみであったが、「間接送電権の制度・在り方等に関する検討会」では、新たに「年間商品」を導入するとともに、対象連系線を追加することとした。
発行対象とする地域間連系線の追加
電力のエリア間取引を行う事業者に対して適切なヘッジ手段を提供するという観点では、なるべく多くの地域間連系線・潮流方向を対象として間接送電権を発行することが望ましい。
現在の間接送電権市場では、エリア間の期待値差が0.01円/kWhを上回る蓋然性が高く、ある程度の取引量が見込まれることを条件として、以下の地域間連系線・潮流方向を対象とした間接送電権が商品設定されている。これらの6商品は2019年の市場開始以来、変更されていない。
- 【北本直流幹線】(北海道−東北:逆方向)
- 【東京中部FC】(東京−中部:順方向・逆方向)
- 【本四連系線】(中国−四国:逆方向)
- 【阿南紀北直流幹線】(関西−四国:逆方向)
- 【関門連系線】(中国−九州:逆方向)
2023年度におけるエリア間値差を確認したところ、北海道→東北(順方向)、東北→東京(順方向)、中部→北陸(逆方向)、中部→関西(逆方向)、北陸→関西(逆方向)、関西→中国(逆方向)は期待値差が0.01円/kWhを上回っているため、これらの6商品(連系線・潮流方向)を2026年度分から新たに追加することとした。
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