住宅の省エネ性能表示を見直しへ 一次エネ消費量に上位等級7・8を新設:第47回「建築分科会」(3/3 ページ)
家庭部門のさらなる脱炭素化に向け、住宅の省エネ性能表示における基準の見直しの検討がスタート。国土交通省では住宅の一次エネルギー消費量等級に、新たにより上位の7・8等級を追加する方針だ。
一次エネルギー消費量の評価上位等級7と8を新設
新たに設定する等級及び評価基準は、既存等級の水準や実態等を踏まえて、「等級7」(BEI≦0.7、基準比▲30%)と「等級8」(BEI≦0.65、基準比▲35%)とする。
等級7と等級8で設定するBEIは等級6と同様に、太陽光発電設備等によるエネルギー消費量の削減量を見込まない評価基準とし、床面積当たりの一次エネルギー消費量(MJ/(m2・年))を性能評価書に記載できることとする。
また、地球温暖化対策計画等において、再エネの利用促進等が位置付けられていることを踏まえ、等級6・7・8では、太陽光発電設備等による一次エネルギー消費量の削減率を性能評価書に記載できることとする。
2030年に向けた省エネ基準の引上げへの対応
現行制度では、平成28年省エネ基準に相当する「等級4」を省エネ基準としているが、建築物省エネ法の改正(2025年4月施行)により、新築住宅ではこの省エネ基準への適合が義務化されたため、「等級4」は最低限満たすべき水準となった。
今後、国は2030年までに、新築住宅が満たすべき義務基準を、現在のZEH水準に引き上げる予定としている。なお、住宅性能表示制度では、耐震性能など、建築基準法に定める最低限のレベルを「等級1」として設定しており、省エネ性能についても同様の考え方を取ることが求められる。
よって、新築住宅に係る省エネ基準がZEH水準へ引き上げられた際には、新築住宅の省エネ性能(断熱等性能等級及び一次エネルギー消費量等級)における「等級1」は、引き上げ後の義務基準レベルに設定し直すこととする。具体的には図7のように、現行のZEH水準等級(断熱等性能「等級5」及び一次エネルギー消費量「等級6」)を、それぞれ新たな「等級1」として設定する。
この等級見直しの前後で各等級の性能水準が変わるため、等級番号だけでは新旧いずれの制度による性能であるか区別がつかなくなるおそれもある。このため、一般消費者等が区別できるよう、新たな性能項目名称を設けることとして、現行の性能項目名称との継続性も考慮し、「断熱等性能等級+(プラス)」「一次エネルギー消費量等級+(プラス)」という案が示された。
現在、国土交通省は、次期「住生活基本計画」の策定に向けた検討を進めている。社会環境や消費者ニーズの変化など、住宅性能表示制度を取り巻く状況は変化していることから、国土交通省では、省エネ性能以外の住宅性能評価事項や住宅性能表示制度のあり方等についても、検討を進める予定としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
太陽光&蓄電池ビジネスに変化の兆し 2025年度から始まる注目の新制度
2025年度、屋根設置太陽光と蓄電池に関する新制度がスタートした。「FIT/FIP制度における初期投資支援スキーム」「建築物の省エネ基準適合義務化」「FIP電源併設蓄電池の系統充電の拡大」「系統用蓄電池の早期連系追加対策」、それぞれのポイントとビジネスへの影響は?
料金は1件4.4万円 スマートメーターのオプトアウト(拒否)制度が2028年開始へ
原則として全需要家に導入することとなっているスマートメーター。資源エネルギー庁ではこのスマートメーターの設置を希望しない需要家を対象とするオプトアウト制度について、その内容や費用負担の方向性の検討を開始した。
窓に後付けできるロールタイプの太陽光発電システム、LIXILが製品化
LIXILがロールスクリーン状の屋内設置型太陽光発電設備「PVロールスクリーンシステム」を製品化。2025年6月から受注を開始する。



