導入検討が進む「同時市場」――揚水発電・蓄電池・DRの取り扱いの方向性:第16回「同時市場の在り方等に関する検討会」(5/5 ページ)
本格的な導入に向けて制度設計が進んでいる同時市場。「同時市場の在り方等に関する検討会」の第16回会合では、同市場における揚水発電や蓄電池、分散型エネルギーリソースの取り扱いなどについて議論が行われた。
TSOから把握できないDRの扱い
インバランス回避のために行う「市場外DR(Implicit DR)」は、BG(バランシンググループ)内で完結するため、TSOはDR量を直接的に把握することはできず、需要の変動(又は不変動)として、間接的に把握することとなる。
TSOは気温や気象等から需要変動を想定しているが、見えないDR(BTM)が行われることにより、下がるはずの需要が下がらず(又はその逆)、TSOは正確な需要想定や潮流想定を行うことが困難となる。これにより、調整力確保量の過不足や再エネ出力制御の過不足、混雑処理量の過不足や系統設備増強の過不足が生じ、安定供給への支障や費用増加の原因となると懸念される。
米国では同様の問題意識のもと、DR情報をTSOに報告を求めるなどの対策を進めており、今後も増加が想定されるBTMリソースに対して、日本の同時市場でどのような対策を取るべきか検討を進める予定としている。
ローカル系統の混雑管理との協調
同時市場では、SCUCやSCEDの計算に要する時間を考慮し、その対象を上位2電圧の基幹系統とする予定であるが、DERはローカル系統以下に接続されることが多く、ローカル系統で混雑が発生した場合、同時市場(基幹系統の混雑管理)とローカル系統の混雑管理をどのように両立させていくかが課題となる。
ローカル系統に接続するDERリソースは、ローカル系統の混雑状況によっては出力(応札)できない領域もあるため、それらの制約を無視して同時市場に応札し約定すると、約定結果に従うことができない(もし従うとローカル系統混雑が発生する)状況となる。
また小規模なDERはアグリゲーションを行うことが一般的であるが、地理的に離れたアグリゲーションが行われると、これも系統混雑を招く原因となり得る。これらは同時市場だけで解決できる課題ではないため、他の審議会等での検討も含め、今後の検討課題としている。
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