2040・2050年の電力需給の見通しは? シナリオ別の試算結果が公表:第9回「将来の電力需給シナリオに関する検討会」(5/5 ページ)
第9回「将来の電力需給シナリオに関する検討会」において、日本の2040年および2050年の電力需給シナリオが公表された。
kWh需給バランス算定結果の例
検討会事務局では、kWバランスだけでなく、各モデルシナリオにおいて最も厳しい需給断面のkWhバランスについても確認を行っている。
同じくシナリオ16(2050年時点の需要12,500億kWh、原子力は大(3,700万kW)、火力は全て経年リプレース)の夏季夜間断面について、kW不足分をすべて火力(水素専焼)で補完すると仮定し、年間のkWh需給バランスを試算したものが図9である。他のシナリオでも計算の仕方は同じである(2040年の追加火力は水素混焼)。
追加された火力電源は、需給逼迫時にしか稼働しないと想定されるため、その年間設備利用率は38%と低く、他のシナリオでも34〜45%と低い結果となっている。kWhで稼ぐことが難しい火力電源を、どのように新規投資を促すかは大きな課題であると考えられる。
現在の「電力需給検証」の手法との違い
検討会では、2040年や2050年といった遠い将来の需給バランスを検討しており、正確性についてあまり気にする必要はないかもしれないが、太陽光発電は数億kW規模で導入される電源であるため、現在の「電力需給検証」の手法とどのような違いがあるのかを確認しておきたい。
現在の電力需給検証では、太陽光供給力の「安定的に見込める量」として、実績下位1σ平均を使用しており、夏季の場合、設備導入量に対する出力比率は0.45となる。
これにより、夏季の最大需要時(概ね14〜15時)における太陽光供給力は全国で2,766万kW(2025年度)と算定されている。なお、電力需給検証では最大需要時だけでなく、最小予備率となる時間帯(概ね17時)についても確認しており、太陽光供給力は全国で1,230万kW(2025年度)と算定されている。
検討会のモデルシナリオ20個すべてにおいて、夏季の最大需要は昼間ではなく夜間に発生すると想定されており、DRの稼働やロードカーブ作成について、より丁寧な説明が求められる。
また冬季は、エリアにより最大需要発生時間帯が9〜10時や18〜19時と異なり、2024年度冬季は全国の最大需要発生時間帯も9〜10時であった。午前であれば太陽光出力も見込まれるため、2024年度冬季の太陽光供給力は最大需要時に669万kWと算定され、実績は1,974万kWとなった。
なお、10年先までを対象とした供給計画では、検討会が参照した調整係数を用いており、目的に応じた算定手法の適用と、ミスリードを招かぬような関係者への見せ方の工夫が求められる。
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