2030年目標へ残された大きなギャップ――環境・国交・農水省が目指す再エネ普及策の現状:第73回「再エネ大量導入・次世代電力NW小委員会」(2/4 ページ)
「再エネ大量導入・次世代電力NW小委員会」の第73回会合で、環境省・国土交通省・農林水産省による2040年度に向けた再エネ普及施策の動向が報告された。
地域共生型太陽光発電の導入施策による進捗状況
再エネの最大限の導入のためには、地域における合意形成が図られ、環境に適正に配慮し、地域に貢献する地域共生型の再エネを増やすことが重要であるが、地域共生型太陽光発電の導入施策では、4.1GWの目標に対して導入は1.1GWに留まる。
環境省では、脱炭素と地域課題解決の同時実現のモデルとなる「脱炭素先行地域」を2025年度までに少なくとも100地域選定する計画としており、現時点88地域を選定済みである。また、屋根置き太陽光発電や、ZEB・ZEH、EV等の取り組みを地方公共団体が複数年度にわたり複合的に実施する「重点対策加速化事業」では、148自治体を選定済みである。
これら「脱炭素先行地域」と「重点対策加速化事業」による現時点の導入量は0.18GWに留まるが、計画期間全体での導入予定量は1.0GWと報告されている。
環境省は、これまでの事業で得られた実践的なノウハウや優良事例の積極的発信を行うとともに、顕在化した課題に対する環境省地方環境事務所による伴走支援や都道府県のバックアップを進める予定としている。
地域共生型再エネの導入促進施策による進捗状況
地域共生型再エネの導入促進に係る施策の一つが「農山漁村再生可能エネルギー法」の活用である。2014年の施行以来、99の市町村が再エネ導入計画を作成済みであり、同法に基づく設備整備計画のうち、太陽光発電は32件・0.4GW(2023年度末)となっている。
農林水産省では、2030年度に200以上の地域で再エネ導入計画作成という新たな目標を掲げている。
営農型太陽光発電設備を設置するための農地転用許可件数は着実に増加しており、2022年度(令和4年度)までに累計5,351件となっている。営農型太陽光発電は、平均的な単収と比較しておおむね2割以上減収しないことが農地転用許可の要件とされるが、2022年度末時点では、22%の設備で営農に支障が生じている。ただし、榊のように生育に年数の掛かる農作物はまだ営農支障の判断が行われておらず、農林水産省では実際の支障率はもっと高いと認識している。
環境省では、大きな導入ポテンシャルのある営農型太陽光発電について、事業規律や適切な営農の確保を前提として、地方公共団体の関与等により適正性が確保された事業の導入拡大を進めていくこととしている。
営農型太陽光発電の導入拡大に向けては、地域に貢献する優良なモデルの創出や水平展開のほか、遮光率と収量の関係等の科学的知見の不足などが課題となっている。このため環境省と農林水産省は、これから営農型事業を始めようとする事業者等が活用できるマニュアルを作成中であり、本年夏頃に公開予定としている。
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