2030年目標へ残された大きなギャップ――環境・国交・農水省が目指す再エネ普及策の現状:第73回「再エネ大量導入・次世代電力NW小委員会」(4/4 ページ)
「再エネ大量導入・次世代電力NW小委員会」の第73回会合で、環境省・国土交通省・農林水産省による2040年度に向けた再エネ普及施策の動向が報告された。
新築住宅への施策強化の進捗状況
第6次・第7次エネ基では、2050年には太陽光発電設備の設置が合理的な住宅・建築物の100%、2030年には新築戸建住宅の60%への設置を目標としており、これによる設備容量は3.5GWとなる。2023年度の新築戸建住宅の太陽光発電設備設置率は36.5%まで上昇している。
これまで住宅トップランナー制度では、一定規模以上の事業者に対して、一定の省エネ基準の達成を求めてきたが、国土交通省はトップランナー基準として、新たに太陽光発電設備設置率を加えることとした。新たな基準は2027年度を目標年度として、建売戸建住宅では37.5%、注文戸建住宅では87.5%としている。
また、国はZEHの定義を見直し、1戸あたりの太陽光搭載率の増加を促すことを企図して、上位シリーズ(GX ZEH+)を設定することとした。
空港の再エネ拠点化の進捗状況
国土交通省では、所管するインフラ設備・空間を活用した再エネ導入を進めており、その施策の一つが空港の再エネ拠点化であり、太陽光発電の2030年目標量は2.3GWとしている。
国は全国96空港に対して「空港脱炭素化推進計画」の策定を求めており、現在、48空港において認定・作成済みとなっている。これら作成済みの推進計画における太陽光発電設備容量は0.32GWに留まっており、大きなギャップが残されている。
2024年度の導入実績は現在集約中であり、未公開である。
第7次エネ基の2040年度エネルギー需給の見通しでは、太陽光発電は総発電電力量1.1〜1.2兆kWh程度のうち23〜29%程度(つまり、3,000億kWh程度)と、2030年目標の2倍以上に増加すると想定している。まずは2030年度目標の確実な達成に向けて、より具体的な障壁の分析と省庁横断的な対策の実施が求められる。
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