系統用蓄電池の接続検討が急増 受付量は1.1億kW超で「空押さえ」が課題に:第3回「次世代電力系統WG」(3/4 ページ)
系統用蓄電池の接続手続きが急増し、系統量量の「空押さえ」状態などの課題が顕在化。資源エネルギー庁ではこうした状況を受け、系統用蓄電池の接続検討の実態を調査するとともに、系統用蓄電池の接続ルールの見直し等について検討を開始した。
系統アクセス手続きにおける規律強化
系統用蓄電池を含む発電等設備の系統アクセス手続きには、任意の「事前相談」の後、図7のような「接続検討」と「契約申込」のプロセスがある。
系統接続に要する工事費負担金は、具体的な地点ごとに大きく異なり得るため、蓄電池事業者側には、安く早期に接続できる地点を探るため、複数の地点で接続検討を申し込む(費用見積を取得する)インセンティブがある。
WG事務局調査(図8)によると、補助金、オークションの1申請当たりの接続検討件数は1〜2件が最頻値であるものの、事業者によっては1申請を行う際に、数十件の接続検討の申込みを行っていると考えられている。
また通常、接続検討申請は蓄電池事業者自身又は協力企業が行うが、投機を目的とした事業者の存在が指摘されている。このような事業者は、系統連系する権利を蓄電池事業者に転売することを目的として、先行的に接続検討・接続契約等の手続きを行っていると考えられる。
確度の低い接続検討が増えることにより、一般送配電事業者による検討・費用見積等に時間を要し、系統用蓄電池の系統アクセス手続きの長期化につながっている。
系統の容量は契約申込順に確保されるが、一般送配電事業者による工事は、蓄電池事業者からの工事費負担金の入金後に行うこととしている。このため、契約申込後に蓄電池事業者(又は第三者)が意図的に入金を怠る場合、工事は着工されず、実質的に系統容量の「空押さえ」状態が生じることとなる。系統用蓄電池の接続契約済み容量は現在約1,200万kWに上るが、確実性の低いものも含まれていると考えられる。
同様の「空押さえ」問題は、近年急増するデータセンター等の大規模需要家でも指摘されており、エネ庁では系統アクセス手続きにおける規律強化について、検討を進める予定としている。
順潮流側ノンファーム型接続導入の検討
発電設備(逆潮流)については、2021年から順次ノンファーム型接続が導入され、系統混雑時の出力抑制を前提として、速やかに低コストで系統に接続することが可能となっている。他方、蓄電池を含む需要設備(順調流)には現在もファーム型接続が適用されるため、運用容量が不足する場合、系統増強工事を待つ必要がある。
今後、系統用蓄電池の順潮流側ノンファーム型接続を導入した場合、充電制限指令により事業の不確実性が高まるものの、非効率的な系統増強工事を回避し、速やかな系統接続が可能になると期待される。
このため次世代電力系統WGでは、順潮流側ノンファーム型接続の導入に向け、ノンファーム型接続を適用する電圧階級や対象設備容量、充電制限指令の配信方法、費用精算方法等について検討を開始した。
すでに北海道電力ネットワークでは、「充電制御装置」によりオンラインで充電を抑制する試行的取り組みを2023年から開始しているが、順潮流側ノンファーム型接続の導入には、一般送配電事業者のシステム改修や、充電制限指令を受ける蓄電池PCS側での技術開発等も必要になるため、全国的な導入スケジュールは現時点、未定である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


