ニュース
2026年度開始の排出量取引制度 「排出枠」算定に業種別ベンチマークを活用へ:第1回「製造業ベンチマークWG」(4/4 ページ)
2026年度から始まる排出量取引制度。対象事業者に対する「排出枠」の割当方法の検討に向けて、政府は「製造業ベンチマークワーキンググループ(WG)」を新設。製造業におけるベンチマークの適用対象の特定と、割当量の算定式の具体化に向けた検討を開始した。
紙パルプ製造業のベンチマーク案
紙パルプ製造業が製造する紙製品(情報用紙等)・板紙(段ボール等)には多様な品種があり、品種により原料や製造工程が異なるため、製造時のCO2排出原単位は品種ごとに異なる。また各社で品種・製品構成等が大きく異なるため、仮にバウンダリーを「紙」・「板紙」よりも細かい品種とした場合、各品種別の対象事業者が少なくなり、ベンチマークの策定は困難となる。
このため、製品の対象範囲については、化学・機械パルプ等を原料として用いる「紙」と、古紙パルプを主原料とする「板紙」とに区分し、それぞれの生産量あたりの排出原単位をベンチマークとする。またプロセスの対象範囲については、パルプ製造工程、抄紙工程、これらに紐付くユーティリティ施設(ボイラー、タービン等)とする。
また各社の品種・製品構成の差により生じる排出原単位の違い(有利/不利)を招かぬため、各社の品種・製品構成を同じと仮定する補正係数を乗じて、補正後のベンチマーク(BM)指標を比較することで、ベンチマーク(BM)水準を決定する。排出枠の割当量については、各社の製品構成の実態に即したものとするため、補正係数の逆数を乗じて算定する。
今後WGでは、残る7業種のヒアリングを行いながら各業種のベンチマーク算定式を作成し、排出量取引制度小委員会において排出枠割当ての水準を取りまとめる予定している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
SHK制度の「排出量調整」、森林吸収量や建築物炭素蓄積量を反映可能に
企業における温室効果ガスの排出量の算定や報告のルールを定めている「SHK制度」。政府は同制度で算定報告を行う場合、これまでクレジット化が必要だった森林吸収量などによるCO2削減量を、より直接的に「調整後排出量」に組み入れられるよう制度を改定する方針だ。
脱炭素化の実現に求められるグリーン製品需要の拡大策 環境省が検討会を新設
一般消費者などの需要サイドや、企業活動におけるバリューチェーン全体の脱炭素化に向けては、グリーン製品のさらなる需要喚起が課題となっている。そこで環境省では、グリーン製品・サービスに対する需要創出や、バリューチェーンのグリーン化に向けた施策を検討する検討会を新設した。
排出量取引制度への参加を2026年度に義務化、その実現に向けた法的課題の論点
企業などが排出する炭素量を取り引きできる「排出量取引制度(ETS)」。現在国内でも試行的に導入が始まっているが、正式な制度化に向け、法的な観点からの整理を行う検討会が設置された。


