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急増するデータセンター・蓄電池の系統接続 連系の迅速化に向け制度変更を検討第4回「次世代電力系統WG」(1/4 ページ)

経済産業省が主催する「次世代電力系統ワーキンググループ」で、データセンターや系統用蓄電池の接続検討が急増していることを受け、迅速な接続に向けた規律の強化や、系統接続ルールの見直し案などが検討された。

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 近年、データセンターや半導体工場等の大規模な電力需要施設の建設計画が急増しており、一般送配電事業者各社に対する特別高圧需要の接続供給契約申込容量(2025年6月末時点)は、全国で約1,838万kWに上る(2025〜2029年度連系予定分。事業者が特定される虞があるもの等は除く)。東京エリアの申込容量927万kWは、同エリアの2024年度最大需要電力5,699万kWの約16%に相当する規模である。


図1.契約申込受付中の特高需要の容量(2025〜2029年度連系予定分) 出典:送配電網協議会を基に筆者作成

 ただし、一部の需要家は事業計画が定まらない時点で接続申込を行うことにより、系統の「空押さえ」が生じるケースもあり、真に電力が必要な事業者へ供給が遅れることや効率的な系統設備の形成を妨げる懸念が高まっている。

 また、系統用蓄電池についても接続検討等の受付件数が急増したことにより、蓄電池に限らず全ての発電等設備において、系統アクセス手続きが遅れ、系統連系までに時間を要する一因となっている。

 このため、「次世代電力系統ワーキンググループ」の第4回会合では、データセンターや蓄電池等の系統接続に関する規律確保に向けて、系統接続ルールの見直しが行われた。

データセンターの系統接続手続きの実態調査

 大規模需要の接続協議が多く発生している東京・関西・九州エリアにおいて、系統接続手続き中のデータセンターを用途とする需要家264件に対して、一般送配電事業者各社からアンケート調査が行われた。

 まず、データセンター(DC)の設備所有・運用の形態としては、以下の3タイプに分類される。

  • ハウジングサービス  :自社で所有、他社へラックスペースを貸与
  • ホスティングサービス :自社で所有、自社でサーバ等を導入、他社へ貸与
  • コロケーションサービス:自社で所有、他社へラック〜フロア単位で貸与

図2.データセンターの設備所有者・運用者 出典:次世代電力系統WG

 今回調査対象のDC264件のうち回答のあった165件中、連系後に設備を他社へ売却予定・売却済である案件は、49件・30%であった。また、25%のDCが「未定・検討中」であり、不確定要素が多い状態で申込を行っている事業者が多いことが明らかになった。

 また、用地取得(借用も含む)のタイミングについては、用地取得済みのDCの大半が工事費負担金を入金する前に用地を取得している一方、工事費負担金の入金後においても、用地取得が完了していないDCが一定程度存在することも明らかとなった。


図3.DCの用地取得のタイミング 出典:次世代電力系統WG

 以上のように、「事業計画が定まっていない」、「土地の取得が完了していない」等の不確定要素が多い状態で契約申込を行っているため、DCの都合により供給承諾に向けた協議が停滞している事例数は37件に上る。

 また、供給承諾の後、DCが工事費負担金の入金までに要した日数としては、約4割が3カ月以内に入金しているものの、半年以上を要した事例(約2割)や1年以上を要した事例(約1割)もあった。ただし現行の運用では、供給開始時期から逆算して入金を促しているため、供給開始時期まで余裕のある案件では、日数が長い=遅延とは限らないことに留意が必要である。


図4.供給承諾から工事費負担金の入金までに要した日数 出典:次世代電力系統WG

 また、DC用途の特高需要家266件のうち、144件の需要家が「最終需要規模」又は「最終需要への到達時期」の計画を変更しており、回答者の中では、系統の「空押さえ」につながりやすい「下方修正」よりも、「上方修正」を行うDCのほうが多いことが明らかとなった。「最終需要への到達時期」については、「後ろ倒し」を行うDCが多く、中には10年以上の後ろ倒しを申し出る事例も確認された。

 これらの計画変更は、申込者の需要家にあたるテナントの需要が流動的であることや、申込者の施設の設計変更、工事延期・遅延等が理由とされている。


表1.DCによる計画変更の内訳 出典:次世代電力系統WG

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