検索
ニュース

排出量取引制度の30年度ベンチマークは上位32.5%、グランドファザリング削減率は年1.7%に第4回「排出量取引制度小委員会」(2/4 ページ)

2026年度から始まる排出量取引制度。その制度設計を検討している経済産業省の「排出量取引制度小委員会」の第4回会合では、業種横断的論点や排出枠割当て水準の考え方が示された。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

製造業ベンチマークにおける自家発比率に関する補正

 製造業の事業者は歴史的に多くの自家発電設備を保有しており、全国の自家発総容量(火力・水力)は約5,200万kWに上る。

 自家発電設備(火力)を保有する事業者は相対的に直接排出量が大きく、自家発を保有せず系統電力を利用する事業者は相対的に間接排出量が大きくなるが、これは短期的にはくつがえすことが困難な違いであると言える。

 このため公平性確保の観点から、複数の業種において、ベンチマーク指標を直接・間接排出量を合算した上で策定することとした。排出枠の割当に際しては、ベンチマークに事業者ごとの直接排出比率を乗じて決定するため、自家発有無の違いが有利/不利をもたらすことはない。


図2.直接・間接排出量合計によるベンチマークの策定 出典:製造業ベンチマークWG

 なお、直接/間接排出量の比率の違いは自家発/買電の大小の違いだけでなく、外部からの蒸気購入量の大小の違いや、コークス等炭材使用量の違いにも左右されるため、これらについても直接排出比率の補正を行うこととした。

 直接排出量のばらつきの大きさは業種によって異なるため、当該事業を所管する大臣が、事業者間の公平性の確保や制度執行の簡素化の観点を踏まえ、直接排出比率に関する補正の必要性を判断する。現時点この補正が予定されている業種は、石油精製、ナフサクラッカー、電炉普通鋼、電炉特殊鋼、セメントであり、紙・板紙製造については検討中である。


図3.直接排出比率に応じた補正に関する算定式 出典:排出量取引制度小委員会

 当該補正では、ベンチマーク指標や割当量の算定式に間接排出量を含むため、購入電力・蒸気にどのような排出係数を用いるかが論点となる。温対法SHK制度では、各社の間接排出量はどの小売電気事業者等から購入するかや非化石証書等の利用次第で異なるが、当該補正では、非化石価値の反映を行わない全国平均の排出係数を用いることとした。

「副生燃料」に関する業界横断的な考え方

 製造業の生産活動に伴い生じる副生燃料の有効利用は、排出削減の観点だけでなく、燃料輸入抑制の観点からも重要である。

 ただし、一般的に副生燃料は通常の燃料と比べ排出係数が高いほか、燃焼効率が低く消費量が増えるため、直接排出量は増加することとなる。

 また副生燃料は複数の業種において有効利用されているため、ベンチマークによる排出枠割当において、副生燃料の有効利用を行う事業者が著しく不利とならないよう、業界横断的な統一ルールを策定することが求められる。


図4.副生燃料使用による排出原単位の悪化要因 出典:排出量取引制度小委員会

 副生燃料の有効利用を妨げないためには、通常燃料との排出係数や燃焼効率の違いを考慮した排出量の「差分」に相当する排出枠を追加的に割り当てる必要がある。具体的には、表1の算定式のように、副生燃料を消費するプロセスに対して、通常の燃料との排出量の差分をグランドファザリング(GF)方式で割り当てることとする。なお、副生燃料由来の排出削減手段は通常の化石燃料と比べ限定的であることを踏まえ、後述のプロセス由来排出のGF削減率を適用する。

 また、表1下段の燃料ベンチマーク(BM)対象プロセスにおいて「活動量」とは燃料使用量(熱量)であるため、燃焼効率の差は考慮せず、副生燃料とその他の燃料を切り分けたうえで、副生燃料について別途排出枠の割り当てを行うこととする。

 なお、表1の※2「0.85」とは、国内発電事業者のLNG火力と副生燃料混焼設備との発電効率の比較により算出したものである。


表1.副生燃料の利用に係る排出枠の割当方法 出典:排出量取引制度小委員会

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る