温暖化防止に役立つ海の「ブルーカーボン」 2040年度に200万トンのCO2吸収量を確保へ:「地球温暖化防止に貢献するブルーカーボンの役割に関する検討会」(3/3 ページ)
海の植物等が吸収・固定する炭素を意味する「ブルーカーボン」。国土交通省の「地球温暖化防止に貢献するブルーカーボンの役割に関する検討会」は2025年8月、日本におけるブルーカーボンの算定手法やクレジットの活用方法などについて報告した。
国のインベントリにおけるブルーカーボンの算定報告
「温室効果ガス排出・吸収目録(GHGインベントリ)」とは、国が1年間に排出・吸収するGHGの量を取りまとめたデータであり、各国は国連気候変動枠組条約事務局に毎年提出することが義務づけられている。
ブルーカーボン生態系ついてIPCCガイドラインでは、マングローブや塩性湿地、「海草」藻場におけるCO2吸収量の算定方法論が示されているが、「海藻」藻場は明示されていない。
このため日本は、海草・海藻の双方における炭素貯留量を評価する独自モデルの開発を進め、GHGインベントリにおいて、2024年に世界で初めて、海草藻場・海藻藻場による吸収量を合わせて算定・報告を行った。最新の2025年提出インベントリ(2023年度実績)におけるブルーカーボン生態系による吸収量は、約34万t-CO2に上る。
国は今年度から、吸収源としての期待が大きい沖合のブルーカーボンについても検討を開始し、2040年度には200万t-CO2の吸収量を確保することを目指している。
なお海外では、自然プロセスとしてのブルーカーボン生態系によるCO2吸収・固定だけでなく、大型海藻類の大規模な養殖(食用目的外)による炭素除去プロジェクトも検討されている。
ブルーカーボン由来のカーボン・クレジットの活用
ジャパンブルーエコノミー技術研究組合は2020年から、藻場の保全活動等の実施者(環境活動団体等)により創出されたCO2吸収量を認証し、クレジット取引を可能とする「Jブルークレジット制度」を運用している。
2025年3月までに、46件のプロジェクトで累計約9,000トンのクレジットが認証され、2024年度の平均取引単価は52,856円/t-CO2であったと報告されている。クレジットの販売収益は、藻場の保全活動等に充てられている。
国土交通省では、藻場・干潟等及び生物共生型港湾構造物を「ブルーインフラ」と位置づけており、その環境整備等の取り組みを進めている。国や港湾管理者が発注する港湾整備工事において、Jブルークレジット制度の活用等によるブルーインフラの保全・再生・創出の取り組みを行う場合に、工事成績評定にて加点評価が行われる。
Jブルークレジットはボランタリークレジットであるが、排出量取引制度GX-ETSの第1フェーズ(2023〜2025年度)において利用可能な「適格カーボン・クレジット」の一つとして認められている。
国は「地球温暖化対策計画」の目標達成に向け、ブルーカーボン由来のカーボン・クレジットについて、国が制度を適切に管理できる仕組みを関係省庁が連携して検討を進めることとした。
一般財団法人みなと総合研究財団では、「全国海の再生・ブルーインフラ賞」により、海辺空間の環境再生やブルーインフラの拡大に貢献する優良な取り組みを表彰している。環境活動団体、教育・研究機関、漁業関係者、企業、地方自治体など、多様な主体の連携によるブルーインフラの拡大、ブルーカーボン生態系の維持拡大が期待される。
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