新たな太陽光発電の出力予測手法を活用 三次調整力②の必要量を低減へ:第58回「需給調整市場検討小委員会」(1/3 ページ)
応札量の不足などを背景に、三次調整力②などの調達費用の高騰が課題となっている需給調整市場。需給調整市場検討小委員会の第58回会合では、三次調整力②の必要量そのものの低減や適正化に向けて、新たな太陽光発電の出力予測技術の活用が提案された。
太陽光発電等の変動性再エネ電源のさらなる大量導入が想定されるが、安定供給の確保及び調整力調達費用抑制といった経済性の観点から、その発電出力予測精度を高めることが重要である。
一般送配電事業者が調整力を調達する需給調整市場では2024年4月に全商品の取引を開始した。しかし応札量の不足等により、三次調整力②等の前日商品の調達費用が高騰した。
その後、募集量削減等の対策を行ってきたことにより、前日商品の調達費用は大きく抑制されてきたが、根本対策としては、三次調整力②の必要量そのものの低減・適正化も必要とされる。
このため、国はNEDO事業において再エネ出力予測精度の向上に関する技術開発を行い、2025年10月には、日射量予測の「大外し」を低減する予測技術の成果が公表された(関連記事:日射量予測の“大外し”を低減する新技術 再エネ電源の調整力コストの低減に)。
広域機関では、これまで一般送配電事業者と連携しながら三次②必要量の低減に向けたルール検討を行ってきたが、その需給調整市場検討小委員会では、NEDO事業の成果を踏まえた三次②必要量算定に関する新たな手法の導入が提案された。
なお、調整力は再エネの変動だけでなく、需要変動や電源の脱落等にも対応するものであるが、本稿では太陽光の出力予測に対応する三次②のみを扱っている。
三次調整力②の概要
FIT制度では、再エネ発電事業者のインバランスリスクを実質的に免除するための「特例制度」が設けられている。国内の太陽光発電導入量7,680万kW(2025年3月末時点)の大半がFIT制度によるものであるが、FIT電源のほぼ全てがこのインバランス特例制度(①又は③)を利用していると考えられる。
FIT特例①では、一般送配電事業者が前日に再エネ出力を予測し、小売電気事業者はこれをそのまま発電計画値として使用し、実需給まで当該発電計画値の見直しは行われない。
このため、FIT再エネの出力予測誤差のうち、「前日〜ゲートクローズ(GC)」間の変動・誤差に対応する特別な調整力が必要となり、三次調整力②が前日商品として設けられている。FIPや非FIT/FIPの再エネ電源であれば、三次②は必要としない。
再エネ出力予測データと三次②必要量の関係性は図3の通りであり、前日6時の再エネ予測値が三次②必要量の算定に使用され、前日15時の再エネ予測値が三次②追加調達の判断と追加調達量の算定に使用される。
なお、気象庁が取得した生の気象データは気象協会等を経由して、一般送配電事業者が再エネ出力予測を算出するまでには最短でも6時間程度を要することに留意が必要である。
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